不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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41~50話

お向かいの一室で【下】

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「本当にいいんだな? 途中でやめろと言われても、やめてやれないが……」

「はい、大丈夫です!」

「後悔することに……」

「大丈夫ですって!」

 ベッドの中央で向かい合う。
 ヨルグは胡座あぐらで、私はその正面にペタンと座り、両手を膝に置いてワクワクと待機している。

 必需品だろうと思って返却したハンカチは、無言でサイドチェストにしまわれてしまった。なので今は、ハンカチも正真正銘二人きりの状況だ。

「わかっているのか? リズを見ながら浅ましい欲をかき立て、精を吐き出すということだぞ? やはり不快に感じるのでは……」

「んもうっ、さっきから大丈夫だって言ってるじゃないですか! 毎晩ヨルグさんがハンカチが私のだったって知って、私、嬉しかったんですから! さあ、遠慮なくどうぞ!」

「っ、本当に全部見られていたんだな……」

 終わらない押し問答に『大丈夫』だと力強く答えれば、ヨルグも覚悟を決めたらしく騎士服の上衣を脱いで、バサリとベッドの外へ放った。

 腰元を隠していた上衣の裾がなくなり、ズボンの盛り上がりがあらわになる。
 やはり、先ほどの『硬い異物』の正体はこれだったようだ。

 ベルトが外され、ズボンがくつろげられると、なかから限界まで張り詰めた下穿きが現れた。

「苦しそう……」

 ギチギチに押さえつけられた雄芯と下穿きとのせめぎ合いは、下穿きがやや劣勢だろう。
 隠しボタンになっているというのに、ボタン部分の布地だけが引っ張られて隙間から『違う色』が覗いている。

 ――ゴクリ、と。
 音を立てたのはどちらの喉だったのか。

 もどかしそうに下穿きのボタンが外されると、飛び出した雄芯がグンッと天をいた。

「わっ! すごい……、もうこんなにおっきくなってる……」

 一人で覗いていたときの癖で、思ったことが無意識に口から零れていく。

「――っ」

 応えるようにピクンッと跳ねた雄芯に手を添え、ヨルグがゆるゆるとしごきはじめた。
 他の肌の色とは違う、熟したクランベリーのような赤黒い幹が、大きな手のひらのなかで脈打っている。

「熱そう……。あっ、またビクッてした」

 意思を持っているかのように私の声に反応する様は、まるでそれ自体がひとつの生き物のようだ。
 先端からあふれた汁がたらりと幹を伝い、手のひらに擦られてグチグチと卑猥な水音を響かせる。

 通り越しではない。
 二人を隔てる壁もない。
 透視では感じることのできなかった音も、吐息も、匂いも、熱も、全てが同じ空間にある。
 手の届かない相手だと思っていたヨルグの部屋で、こうして同じベッドの上にいるなんて――。

 汁のぬめりを借りて、徐々に手の動きが速まっていく。
 ハンカチのないこの状況で、本当に『私』だけに興奮してくれているのだ。毎晩、ハンカチを前にしていたときのように――。

「すごい……」

 込み上げる唾液をゴクリと飲み込み、その一点を注視する。

「っは……、リズ……」

 呼ばれて視線を上げれば、見えない前髪の奥からなぜか、じっと見つめられているような気がした。

 もう腕も解かれ、触れられてもいないのに、『逃げられない』と強く感じる。
 逃げ出すつもりなんてないはずなのに妙に落ち着かない気持ちになって、山なりにした膝をぎゅうっと抱き寄せた――途端。

「リっ――!!?」

 不意にガクンとヨルグの上体が折れ、手の血管が浮くほど強く握りしめられた雄芯の先から、白濁が僅かにピュッと飛び出した。
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