不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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31~40話

この目に映るもの【中】

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 違う、大丈夫。さっき影の見えた方向に視線を進めていけば、きっとまた見つけられるはずだから。大丈夫、大丈夫。だってこれは、私にしかできないことで。私の能力で、私が、絶対に――

 ぎゅっ

 血の気の引いた手に、熱いほどのぬくもりが重なった。
 ソファの座面が沈み、右隣に人が座ったのを感じる。

「リズにばかり大変な役目をいてすまない。ガファスさんは言っていたが、もし無理そうだと感じたら言ってくれ。地上からも偵察隊が向かっているから心配はいらない」

 重ねられた手のひらから伝わってくるのは、安心するぬくもりと、期待と信頼と、そして一人ではないのだという心強さ。
 ――そうだ。視界の先がどんな場所だろうと、何があろうと、私は決して一人じゃない。

 ヨルグは、『透視ができる』なんていう突拍子もない私の話を信じてくれた。
 おじいちゃんは、私の意志を貫けるようにと、大切に守ってきただろうおばあちゃんとの約束を破ってまで能力のことを話してくれた。

 その信頼に応えたい。
 見知らぬ誰かを守ろうと、ヨルグの力になろうと、そう決めたはずじゃないか!

「……でも、私が見つけられれば一番早いですもんねっ!」

 強引にニッと口角を上げる。
 大丈夫。――大丈夫に、今なった!

「このまま手を繋いでいてもいいですか?」

「ああ、もちろん」

 重ねているだけだった手を繋ぎ替え、ぎゅっと握りしめられる。
 手のひらから染み込む熱に背中を押されるようにして、グンッと視線を進めた。



 山をすり抜け、町を越え、ほどなくして視界上空にドラゴンの影を捉えた。
 ドラゴンは巣の場所を決めあぐねているのか、悠々と蛇行しながら飛びつづけている。

 見えた方向、周囲の地形などを伝えれば、ヨルグが断片的な情報を地図と照らし合わせながら、通信機で各所に連絡を入れていく。
 しかしドラゴンも風景も、地上から見上げるばかりでは正確な位置の特定は難しい。
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