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31~40話
誰かのために【上】
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どうしようどうしよう。勢いで昼食に誘ったはいいものの、一体何を話せばいいのだろう。告白のことに一切触れないというのも逆にわざとらしいのでは!?
ガチャッ
「ただいまーっ」
ふわりとあふれ出す芳ばしい香りの奥に、おじいちゃんの姿を見つけてホッとする。
よかった。ヨルグと二人きりの状況は免れたようだ。
「おう、帰ってきたか」
「うん。あのね、ばったりヨルグさんと会って、お昼に誘ったんだけど……」
「そいつぁちょうどいい。試作品を作りすぎちまってな」
おじいちゃんは両手に持ったカゴをテーブルに置くと、エプロンを椅子の背に引っかけて席に着いた。
カゴのなかには美味しそうなパンが山盛りだ。
「試作品!? やったぁー! ヨルグさんヨルグさんっ、今日は焼きたてパンが食べ放題ですよっ!」
早く早く、とヨルグを招き入れる。
家の鍵を壁のフックにかけ、ポシェットを部屋に置きに行く時間さえ惜しんで調理場の隅に置くと、いそいそと昼食の支度に取りかかった。
「ガファスさん、すみません。突然お邪魔してしまって」
「なに、たんまり食ってけ」
顔には出ないものの、おじいちゃんもヨルグを歓迎しているようだ。行き当たりばったりなお誘いだったけれど、絶好のタイミングで招待できてよかったと思う。
毎日美味しそうな焼きたてパンを陳列しながらも、売り物に手をつけることは許されない。私が食べられるものといえば、お昼のピークを過ぎた残りの賄いパンと、すっかり冷めきった売れ残り、それから家用にと作り置きされたバゲットだけ。
試作品は、おじいちゃんの焼きたてパンを食べられる貴重な機会なのだ。
せっかくのパンが冷めないうちに、早く! 早くお昼にしないと!
「すぐに用意するわね! 朝のうちに作っておいたのを温め直すだけだから、ちょっと待ってて! ヨルグさんも適当に座っててくださいね」
「ああ、ありがとう」
四人がけのテーブルで、ヨルグはおじいちゃんのはす向かいに腰を下ろした。
パンの取り皿と、三人分のビーフシチューをテーブルに並べる。ヨルグがよく食べることはわかっているので、ヨルグの分だけは最初から大盛りだ。
私はおじいちゃんの隣――ヨルグの対面に腰を下ろした。
「今日のパンは変わった形をしてるのね? あら、これってウサギ?」
ほかほかのパンの山から一つを手に取る。
カゴには、私がデート用に作ったようなウサギをはじめ、猫や小鳥などの動物型、丸っこい形に目鼻がついた人の顔のようなパンまであった。
ガチャッ
「ただいまーっ」
ふわりとあふれ出す芳ばしい香りの奥に、おじいちゃんの姿を見つけてホッとする。
よかった。ヨルグと二人きりの状況は免れたようだ。
「おう、帰ってきたか」
「うん。あのね、ばったりヨルグさんと会って、お昼に誘ったんだけど……」
「そいつぁちょうどいい。試作品を作りすぎちまってな」
おじいちゃんは両手に持ったカゴをテーブルに置くと、エプロンを椅子の背に引っかけて席に着いた。
カゴのなかには美味しそうなパンが山盛りだ。
「試作品!? やったぁー! ヨルグさんヨルグさんっ、今日は焼きたてパンが食べ放題ですよっ!」
早く早く、とヨルグを招き入れる。
家の鍵を壁のフックにかけ、ポシェットを部屋に置きに行く時間さえ惜しんで調理場の隅に置くと、いそいそと昼食の支度に取りかかった。
「ガファスさん、すみません。突然お邪魔してしまって」
「なに、たんまり食ってけ」
顔には出ないものの、おじいちゃんもヨルグを歓迎しているようだ。行き当たりばったりなお誘いだったけれど、絶好のタイミングで招待できてよかったと思う。
毎日美味しそうな焼きたてパンを陳列しながらも、売り物に手をつけることは許されない。私が食べられるものといえば、お昼のピークを過ぎた残りの賄いパンと、すっかり冷めきった売れ残り、それから家用にと作り置きされたバゲットだけ。
試作品は、おじいちゃんの焼きたてパンを食べられる貴重な機会なのだ。
せっかくのパンが冷めないうちに、早く! 早くお昼にしないと!
「すぐに用意するわね! 朝のうちに作っておいたのを温め直すだけだから、ちょっと待ってて! ヨルグさんも適当に座っててくださいね」
「ああ、ありがとう」
四人がけのテーブルで、ヨルグはおじいちゃんのはす向かいに腰を下ろした。
パンの取り皿と、三人分のビーフシチューをテーブルに並べる。ヨルグがよく食べることはわかっているので、ヨルグの分だけは最初から大盛りだ。
私はおじいちゃんの隣――ヨルグの対面に腰を下ろした。
「今日のパンは変わった形をしてるのね? あら、これってウサギ?」
ほかほかのパンの山から一つを手に取る。
カゴには、私がデート用に作ったようなウサギをはじめ、猫や小鳥などの動物型、丸っこい形に目鼻がついた人の顔のようなパンまであった。
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