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21~30話
あの日きみと《ヨルグ視点》【中】
しおりを挟む見習いを終えて正式に騎士となってからの主な任務は、市中の警邏と、時折お忍びで街へ出かける王子の警護だった。
――とはいえ、直接的に王子を警護するのは変装した第一部隊の近衛騎士だ。第二部隊の自分たちがすることといえば、王子を守る近衛騎士のさらに外側で、あらかじめ危険の芽を摘み取っておくことくらい。
内容だけ見れば日頃の警邏とさして変わりない。
王子が通る予定の道付近でゴミを漁る野犬を追い払っていると、通信が入った。
「王子殿下がいなくなった。第二部隊も総出で殿下の捜索にかかれ」
正直――またか、と思った。
活発でいたずら盛りの幼い王子は、騒ぎを起こして周囲の目を引きつけ、その隙にテーブルの下など狭い隙間を通って護衛を出し抜き脱走してしまうのだ。
もちろん近衛騎士もそれをわかって警戒しているため、脱走の成功率は高くない。しかし王子のほうもどんどんと手口が巧妙化しているらしく、今日は成功を許してしまったようだ。
「……おーい。どこですかー」
道端の木箱の蓋を開け、あえて細い路地を通り、さりげなく商店の棚下を覗き込む。
近衛騎士たちはお忍びの王子に合わせて庶民のような服装をしているため、不審がられそうな捜索作業はもっぱら騎士服姿の第二部隊が中心に動くことになる。
それでも大々的に王子を捜索することはできない。それは王子が護衛もつけずに一人でいるという事実を、よからぬ輩にまで周知することになってしまうからだ。
道中すれ違う騎士仲間と『こっちにはいなかった』『こっちも同じだ』と言葉なく首を振りあう。
「うーん、いないな……」
いつもであれば、いい加減発見の知らせが届いていてもいい頃だ。
あるときは屋台の菓子を買い食いしながら堂々と通りの中央を歩いていて、あるときは姿を消した現場の店の戸棚に隠れているのを発見された。
……今回はもう少し遠くまで行ったのか?
少し悩んで、現在地からほど近い西門へと足を向けた。
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