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21~30話
情熱の行方【下】 ※
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厚みのある上半身に似合わずギュッと引きしまった腰に、昼間の抱擁の感触を思い出して頬が火照る。
下腹には幾筋もの血管がくっきりと浮き上がり、そのすべてが向かう先――昂りへの、血液の集中を思わせる。
「たくましい身体……」
瞬きも忘れ食い入るように見つめていると、山なりに連なった筋肉の表面を一筋の汗がつうと伝っていった。
ゴクッ……
自分の嚥下の音がやけに大きく聞こえる。
ヨルグはベッドの縁に腰かけた状態のまま、左腕を下にしてドサリと横たわった。
背中を丸めて置いていたハンカチに顔を寄せると、うつ伏せ気味に鼻先を埋めながら空いた両手で雄芯をしごく。
片方の手で幹を、もう一方の手のひらでぐりぐりと先端を刺激して、どうやら二回戦目に突入したらしい。
――けれど、問題はそこではなくて。
「胸が……」
横向きに寝そべったことで分厚い胸筋が寄せられ、ヨルグの胸には深い深い谷間ができている。
「…………」
ふと自分の胸元を見下ろして、ペタリと手を触れる。
ギュッと左右から寄せて悪あがきしたあと、力なく腕を下ろした。
一抹の敗北感を胸に、ヨルグへと視線を戻す。
上下する胸の動きからは、ヨルグの呼吸がどれほど荒くなっているかが伝わってくる。
荒々しく息をつき、食い破りそうなほど必死にハンカチに顔を埋めて。
下へと流れた前髪のすき間から、時折垣間見える右目。
邪魔そうに右足をベッドの上に立てれば、こちらへと見せつけるような体勢になった。
新たなぬめりを全体に塗り伸ばしながら両手で雄芯をこすり上げ、じっとしていられないとばかりに腰もグッグッと突き上げる。
「気持ち良さそう……とっても」
もじもじと膝を擦りあわせると、くち、と小さな音がする。
ああ、また下着を汚してしまう……。
わかっていても目が離せない。
いつもは穏やかなヨルグが、全身で何かを希求するかのような情熱的な光景から。
手のしごきをおざなりに、腰の動きが速まっていく。
ハンカチに埋めた顔はよく見えないのに、開かれた脚のあいだにそびえ立つ雄芯は力強く自らの手を突き上げる。
「んっ、はぁ……っ」
仕上げのように大きく数度突き上げたかと思えば、雄芯が二度目の熱を放った。
幹がドクン、ドクンと脈打つのに合わせ、押さえた手の下からもボタボタと白濁がこぼれ落ちる。
しばらくゆるゆると手を動かして余韻に浸ったヨルグは、先ほど脱ぎ捨てたシャツでぞんざいに白濁を拭うと、床に放ったタオルも拾って部屋を出ていった。
ベッドの上には黒いハンカチだけが残されている。
魅力的な女性のお誘いにさえ反応を示さなかったという話。
毎晩思い入れのあるピンクのハンカチを相手にしていたヨルグが、今日は私がプレゼントしたばかりの黒いハンカチを相手に自慰に及んだ。
こんな光景を目にすれば、さすがに私だって気づく。
ヨルグは――――ハンカチに興奮するたちだったのだ。
下腹には幾筋もの血管がくっきりと浮き上がり、そのすべてが向かう先――昂りへの、血液の集中を思わせる。
「たくましい身体……」
瞬きも忘れ食い入るように見つめていると、山なりに連なった筋肉の表面を一筋の汗がつうと伝っていった。
ゴクッ……
自分の嚥下の音がやけに大きく聞こえる。
ヨルグはベッドの縁に腰かけた状態のまま、左腕を下にしてドサリと横たわった。
背中を丸めて置いていたハンカチに顔を寄せると、うつ伏せ気味に鼻先を埋めながら空いた両手で雄芯をしごく。
片方の手で幹を、もう一方の手のひらでぐりぐりと先端を刺激して、どうやら二回戦目に突入したらしい。
――けれど、問題はそこではなくて。
「胸が……」
横向きに寝そべったことで分厚い胸筋が寄せられ、ヨルグの胸には深い深い谷間ができている。
「…………」
ふと自分の胸元を見下ろして、ペタリと手を触れる。
ギュッと左右から寄せて悪あがきしたあと、力なく腕を下ろした。
一抹の敗北感を胸に、ヨルグへと視線を戻す。
上下する胸の動きからは、ヨルグの呼吸がどれほど荒くなっているかが伝わってくる。
荒々しく息をつき、食い破りそうなほど必死にハンカチに顔を埋めて。
下へと流れた前髪のすき間から、時折垣間見える右目。
邪魔そうに右足をベッドの上に立てれば、こちらへと見せつけるような体勢になった。
新たなぬめりを全体に塗り伸ばしながら両手で雄芯をこすり上げ、じっとしていられないとばかりに腰もグッグッと突き上げる。
「気持ち良さそう……とっても」
もじもじと膝を擦りあわせると、くち、と小さな音がする。
ああ、また下着を汚してしまう……。
わかっていても目が離せない。
いつもは穏やかなヨルグが、全身で何かを希求するかのような情熱的な光景から。
手のしごきをおざなりに、腰の動きが速まっていく。
ハンカチに埋めた顔はよく見えないのに、開かれた脚のあいだにそびえ立つ雄芯は力強く自らの手を突き上げる。
「んっ、はぁ……っ」
仕上げのように大きく数度突き上げたかと思えば、雄芯が二度目の熱を放った。
幹がドクン、ドクンと脈打つのに合わせ、押さえた手の下からもボタボタと白濁がこぼれ落ちる。
しばらくゆるゆると手を動かして余韻に浸ったヨルグは、先ほど脱ぎ捨てたシャツでぞんざいに白濁を拭うと、床に放ったタオルも拾って部屋を出ていった。
ベッドの上には黒いハンカチだけが残されている。
魅力的な女性のお誘いにさえ反応を示さなかったという話。
毎晩思い入れのあるピンクのハンカチを相手にしていたヨルグが、今日は私がプレゼントしたばかりの黒いハンカチを相手に自慰に及んだ。
こんな光景を目にすれば、さすがに私だって気づく。
ヨルグは――――ハンカチに興奮するたちだったのだ。
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