不能だと噂の騎士隊長が『可能』なことを私だけが知っている(※のぞきは犯罪です)

南田 此仁

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21~30話

食後のデザート【中】

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「ごちそうさま。どれもとても美味かった」

「えっと……お腹、無理してませんか?」

「ああ、リズの手料理ならいくらでも食べられる」

 私の心配をクスッと笑ってヨルグが答える。
 私が食べているあいだは、きっと私の分まで食べ尽くしてしまわないようペースを合わせてくれていたのだろう。

 まだ食べられるというヨルグの言葉に、そういえばデザートの焼き菓子まで用意してきたのだったと思い出す。
 私は到底入らないけれど、もしかしたらヨルグは食べるだろうか。

 そう思って鞄を探ると、指先にカサッと紙の包みが触れた。

「!」

 手料理だけではお礼に足りないからと、こっそり用意してみたプレゼント。
 ヨルグが好きそうなものはなんだろうと悩み、手作りすることにして、毎晩ちょっとずつ手を進めて今日に間に合わせた。

 でも…………。

 ヨルグは私が今日のデートをどれだけ楽しみにしていたかなんて、露ほどもわかっていなかった。まさか、来ないかもしれないと思われていたなんて。

 私一人が浮かれて、張り切っているだけだとしたら……?

 心臓の冷えるような心地にそっと紙の包みから手を離し、奥を探ってクッキーの入った布包みを取り出す。

「デザート代わりにクッキーを焼いてきたんです。まだ食べられそうですか?」

 パッと布包みを向いたヨルグは、前髪で顔が見えないにも関わらず嬉しそうな気配を漂わせている。

「それはありがたい。今すぐ食べる、と言いたいところだが……リズはもう満腹だろう?」

「私は作りながらたくさん味見したので」

「では……頂戴してもいいだろうか」

「もちろんです。はい、どうぞ!」

 ヨルグは高価な壷でも渡されたみたいに慎重に布包みを受け取ると、恭しい手つきでリボンを解いた。

「…………………………」

「…………ヨルグさん!」

 食い入るようにクッキーを見つめていたヨルグが、ハッとして顔を上げる。

「いや、すまない、嬉しすぎて……。これなら料理とは違い、幾分保存がきくのではないかと思ったら……」

「じゃあクッキーも、また作ります!」

「ああ、ありがとう……!」

 心底ほっとしたように感謝を伝えられる。
 先ほどの発言を思い出して拗ねたいような気持ちになっていたのに、そんなふうに喜ばれたらこちらまで嬉しくなってしまうではないか。
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