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11~20話
昨夜の失態【下】
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開店準備を終えておそるおそるお店のドアを開ければ、案の定いつもの『壁』が立ち塞がっていた。
「オ、オハヨウゴザイマス、ヨルグサン……」
変わらずお店に来てくれたことに安堵しつつ、ふいっと視線を下げて長い脚に向かって挨拶する。
背の低い私が俯けば、ヨルグからは決して顔を見られないから。
挨拶をするのに目を合わせないなんて、お客さんに対してあるまじき対応だけれど……だって! ヨルグだって、もう私とは話もしたくないと思っているかもしれないのに!!
「おはよう……リズ。今日は元気がないな。何かあったのか……?」
「…………ん?」
嫌悪感のない声音にホッとしたのも束の間、何やら聞き捨てならない発言を聞いた気がする。
――なーんてね、そんなまさか!
現実逃避もほどほどにして、しっかり己の過ちと向き合わなくては。
「あのっ、昨日はすみませんでした! 酔って寝ちゃった私をヨルグさんがここまで運んでくれたって、おじいちゃんに聞きました! たくさんご馳走になったうえご迷惑をおかけして、本当に……、なっ、なんてお詫びしたらいいか……!」
やっぱり顔を見る勇気はなくて、深々と頭を下げる。
きゅううっと身の縮こまるような沈黙のあと、怒気のない声が降った。
「……ガファスさんは他にも何か?」
「はい、『人様に迷惑かけるんじゃない』って。本当にすみませんでした!」
おじいちゃんの発言を反芻して、ぎゅっと服の胸元を握りしめる。
やってしまった以上、今は謝ることしかできない。
昨日かかった費用を返せと言われれば貯金をはたいてでも支払うけれど、それと赦してもらえるかどうかは別問題だ。
「……リズ、顔を上げてくれ。俺は迷惑だなんて思っていない」
ヨルグは私よりずっと大人で優しいから、私を気遣ってこう言ってくれているのかもしれない。
『大丈夫だよ』と笑顔を向けながら静かに離れていかれたら、私はどうすればいいのだろう。
もう別れを宣告されたかのような、泣きそうな気持ちでそろりと顔を上げた。
「オ、オハヨウゴザイマス、ヨルグサン……」
変わらずお店に来てくれたことに安堵しつつ、ふいっと視線を下げて長い脚に向かって挨拶する。
背の低い私が俯けば、ヨルグからは決して顔を見られないから。
挨拶をするのに目を合わせないなんて、お客さんに対してあるまじき対応だけれど……だって! ヨルグだって、もう私とは話もしたくないと思っているかもしれないのに!!
「おはよう……リズ。今日は元気がないな。何かあったのか……?」
「…………ん?」
嫌悪感のない声音にホッとしたのも束の間、何やら聞き捨てならない発言を聞いた気がする。
――なーんてね、そんなまさか!
現実逃避もほどほどにして、しっかり己の過ちと向き合わなくては。
「あのっ、昨日はすみませんでした! 酔って寝ちゃった私をヨルグさんがここまで運んでくれたって、おじいちゃんに聞きました! たくさんご馳走になったうえご迷惑をおかけして、本当に……、なっ、なんてお詫びしたらいいか……!」
やっぱり顔を見る勇気はなくて、深々と頭を下げる。
きゅううっと身の縮こまるような沈黙のあと、怒気のない声が降った。
「……ガファスさんは他にも何か?」
「はい、『人様に迷惑かけるんじゃない』って。本当にすみませんでした!」
おじいちゃんの発言を反芻して、ぎゅっと服の胸元を握りしめる。
やってしまった以上、今は謝ることしかできない。
昨日かかった費用を返せと言われれば貯金をはたいてでも支払うけれど、それと赦してもらえるかどうかは別問題だ。
「……リズ、顔を上げてくれ。俺は迷惑だなんて思っていない」
ヨルグは私よりずっと大人で優しいから、私を気遣ってこう言ってくれているのかもしれない。
『大丈夫だよ』と笑顔を向けながら静かに離れていかれたら、私はどうすればいいのだろう。
もう別れを宣告されたかのような、泣きそうな気持ちでそろりと顔を上げた。
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