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11~20話

楽しい昼食の時間【上】

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「はいよ、お待ちどうさま!」

 次々と運ばれてくる皿がテーブルの上を彩る。
 二人席の小さなテーブルはあっという間に一杯になって、最終的にはパンを手に持ち、二人分のパン皿を下げてもらうことでどうにか皿を載せきった。

「――ふふっ! 料理がいっぱい!」

 テーブルが見えないほどギッシリと並んだ皿の上では、美味しそうなフリットの数々が湯気を立てている。

「二度に分けて頼むべきだったか……」

 ヨルグが左手に持った丸パンに視線を落とす。
 たしかに各々の手にまで昼食が侵略してきているけれど、これはこれで楽しいので問題ない。

「誕生日でもないのにこんなにたくさんの料理が並んでるなんて、見てるだけでワクワクしますよ! どれもとっても美味しそう!」

「そうか……リゼットが楽しんでくれているならよかった。では冷めないうちに食べよう」

「はいっ!」

 一面に淡いきつね色の衣が並び、もはやどれが何のフリットなのかわからない。
 ひとまず手近な皿に狙いを定め、プスリとフォークを突き立てた。


 ヨルグが連れてきてくれたのは、フリットのメニューが豊富な大衆食堂だった。
 あれもこれもと目移りしながら胃袋の容量を計算する私に、「余ればすべて俺が食べる」と言って様々な種類を注文してくれたのだ。

 一口大のフリットをハフハフと頬張りながらチラリとヨルグを盗み見れば、品のある動作で、大振りなフリットが吸い込まれるように消えた。

 初めて会った日にパンを食べる姿は見ているけれど、こうして一緒に食事をするのは初めてだ。
 考えてみれば定休日以外ほとんど毎日顔を合わせているというのに、ヨルグについては騎士だということとパンの好みくらいしか知らない。

 前髪に隠れた素顔さえもはっきりと見たことがなくて……まあ、もっとプライベートな部分については毎晩ばっちりしっかりいるわけだけれど…………それはさておき!

 軽く首を振って思考を追い出し、パフッとフリットを噛みしめる。

「んん……っ!」

 ふんわりした衣を噛めば、熱々のチーズがトロリとあふれ出した。――チーズのフリットだ!

 すごい! なんで熱に溶けるチーズを揚げて、固形を保っていられるのだろう!?
 ふわふわで、トロトロで、まろやかな塩気が口腔を満たす。

「んくっ……! このチーズの、すっごく美味しいですよ! ヨルグさんもほら、熱いうちにどうぞ!」

 新たな一つをフォークに刺して、満面の笑みでヨルグへと差し出す。

「――――」

「……?」

 フリットを見つめたまま動かないヨルグに首を傾げ、一拍遅れて自分の失敗を悟った。
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