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1~10話
朝の幸せな時間【上】
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お日様よりも早くに起きて、薄暗いなか開店準備を始める生活にもすっかり慣れた。
事故で両親を亡くした私がおじいちゃんの元にやって来て、はや十年。
初対面のおじいちゃんといきなり二人暮らしなんてどうなることかと思ったけれど、これといった問題もなく充実した毎日を送っている。
なにも召使いのようにこき使われているわけではない。
私が陳列棚を拭きあげたり店先を掃いたりするよりももっと早くから、店長であるおじいちゃんは厨房に籠って売り物の『パン』を作っているのだから。
「今日もいい天気になりそうね」
見上げた空は高く澄んで、空気もカラリと清涼。いつも通り好調な客足が期待できそうだ。
しかしどうにも風が強い。
先ほどから掃いても掃いても、風がどこからか新たな落ち葉を連れてくる。
いい加減に見切りをつけないと、街中の落ち葉がなくなるまで掃き続ける羽目になってしまう……。
「おーい、上がったぞー!」
「はーい! 今行くー!」
ちょうどよく、店内から焼き上がりを告げる声が響く。
元気に返事をして掃除用具をまとめた私は、新たに舞い込んだ落ち葉を見ないふりして店内へと戻った。
芳ばしく焼けた小麦の香りを胸いっぱいに吸い込む。
涌き出る唾液を飲み込んで、干したての布団みたいにほかほかでふくふくのパンたちを、陳列棚にお行儀よく並べていく。
今すぐかぶり付きたいけれど、我慢、我慢。
「お昼はどれにしようかなー?」
昼のピークを過ぎて売れ残ったパンのなかからであれば、賄いとして好きなものを食べていいと許可を取りつけてある。
パン屋で働いていて二番目に楽しみな時間だ。
ちなみに一番は、試作品の焼きたてパンを味見する瞬間!
「うーん、今日の気分はー……やっぱりブリオッシュ! よーっし、売れ残りますように、売れ残りますように、売れ残りますように……」
ブツブツブツ
「おい、売りもんに妙な呪いかけんじゃねえ! 次上がったぞ!」
「あっ、はーい!」
空になったカゴを手に、パタパタと厨房へ駆け戻った。
事故で両親を亡くした私がおじいちゃんの元にやって来て、はや十年。
初対面のおじいちゃんといきなり二人暮らしなんてどうなることかと思ったけれど、これといった問題もなく充実した毎日を送っている。
なにも召使いのようにこき使われているわけではない。
私が陳列棚を拭きあげたり店先を掃いたりするよりももっと早くから、店長であるおじいちゃんは厨房に籠って売り物の『パン』を作っているのだから。
「今日もいい天気になりそうね」
見上げた空は高く澄んで、空気もカラリと清涼。いつも通り好調な客足が期待できそうだ。
しかしどうにも風が強い。
先ほどから掃いても掃いても、風がどこからか新たな落ち葉を連れてくる。
いい加減に見切りをつけないと、街中の落ち葉がなくなるまで掃き続ける羽目になってしまう……。
「おーい、上がったぞー!」
「はーい! 今行くー!」
ちょうどよく、店内から焼き上がりを告げる声が響く。
元気に返事をして掃除用具をまとめた私は、新たに舞い込んだ落ち葉を見ないふりして店内へと戻った。
芳ばしく焼けた小麦の香りを胸いっぱいに吸い込む。
涌き出る唾液を飲み込んで、干したての布団みたいにほかほかでふくふくのパンたちを、陳列棚にお行儀よく並べていく。
今すぐかぶり付きたいけれど、我慢、我慢。
「お昼はどれにしようかなー?」
昼のピークを過ぎて売れ残ったパンのなかからであれば、賄いとして好きなものを食べていいと許可を取りつけてある。
パン屋で働いていて二番目に楽しみな時間だ。
ちなみに一番は、試作品の焼きたてパンを味見する瞬間!
「うーん、今日の気分はー……やっぱりブリオッシュ! よーっし、売れ残りますように、売れ残りますように、売れ残りますように……」
ブツブツブツ
「おい、売りもんに妙な呪いかけんじゃねえ! 次上がったぞ!」
「あっ、はーい!」
空になったカゴを手に、パタパタと厨房へ駆け戻った。
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