くっついちゃった！？ ～ちんちくりん魔法薬師にガサツな騎士隊長を添えて～

41～最終話

捕食者の渇望【上】

　猛獣に抱えられて巣穴に運び込まれる。

「おかえりなさいませ、旦那様。クースニル様」

「おう、今夜はもう下がっていいぞ」

　出迎えてくれた執事に応じながらも、ディノは一切足を止めようとしない。
　大きな歩幅でズンズンと進み、みるみる執事の姿が遠ざかっていく。

「ゼマさん……っ！」

　階段を上りはじめた猛獣の上から両手を伸ばして助けを求めると、執事がハッと何かに気付いた顔をした。

「クースニル様、もしや……！」

「ゼマさん！！」

　私、信じてた……！

「手がお離れになったのですね！？　おめでとうございます！！　明朝までに骨折着ではない通常の婦人服をご用意いたしますので、お任せくださいませ！」

「ゼマさん……っ！」

　私の悲痛な叫びを残し、執事の笑顔は階下に消えた。





　運び込まれたのは、よくよく見知ったディノの寝室。
　ポイとベッドの上に転がされる。

「夕食は済ませてあるな？」

「あるけど、何す――っ」

　問いかけは性急な口づけに呑み込まれた。

「んぐっ……、んむぅ……っ！」

　がぶりと噛みつくみたいな口づけ。
　話すために開いた口に、我が物顔で舌が入り込む。

　覆い被さるように口づけられて、ベッドとディノの間で逃げ場を失う。

「んんっ……、っふ……」

　ぬるーっと舌の表面を撫でられれば伏せたまつげが震え、絡めて吸い上げられればゾクゾクと背筋が反る。
　その隙間にすかさず逞しい腕が潜り込み、片腕で私を抱きしめた。

　熱くて、激しくて、なのに優しい。
　隙間なくディノに触れている実感に心が歓喜する。
　足先がひやりと空気に触れて、靴を脱がされたのだと理解した。

「っぷは、んぅ――っ！」

　角度を変えながら深く深く口腔をむさぼられ、まるで本当に食べられているかのような錯覚に陥おちいる。

　うっとりと思考が溶かされていく。
　このままでは、ディノのもたらす心地よさしかわからなくなってしまいそうな恐ろしさに、ぎゅっとディノのシャツを握りしめる。

　どちらのものともつかない唾液をコクリと飲み下し、それでも間に合わずに頬に伝い落ちた唾液をディノの舌先が追った。

「っは……チェリア」

「んんっ、そこで喋っちゃダメ……！」

　耳元まで舐め辿り、吐息で名を呼ばれてビクンと身体が跳ねる。
　一々反応してしまう自分が恥ずかしくてイヤイヤと首を振ると、首の付け根にちゅっと口づけが落ちた。

「んっ」

「好きなだけ感じてろ。全部可愛いから」