くっついちゃった！？ ～ちんちくりん魔法薬師にガサツな騎士隊長を添えて～

21～30話

名誉の負傷【下】

　ディノの脱衣を手伝い、繋がった右腕を極力動かさないよう慎重に誘導して風呂椅子に座らせる。

「目眩めまいや怠だるさ、ぼーっとする感覚はない？」

「ああ、大丈夫だ」

「身体を洗っていくけど、ちょっとでもおかしな感覚があったらすぐに教えてね？」

「わかった」

　無事な左腕もあまり動かしてほしくないので、風呂椅子に座るディノの前に立ち、私の手で全身を洗っていく。
　傷口から遠い場所は石鹸で、傷口にかかりそうな場所はお湯だけで、負担をかけないように手早く。

　コ・コ・は……。

「こんなところに血液を集めてたら、全身の血が足りなくなっちゃうわ」

「文句ならチェリアに言ってくれ」

「なんでよ！！」

　言い合いながらも、ディノの元気そうな様子が嬉しい。
　私から身体洗いを請け負ったのだ。仕方がないので、ポジション争い仲間の巨塔も石鹸を付けた手でにゅるりと洗ってあげた。

　視界を閉ざしたディノが不意の刺激にビクッと肩を跳ねさせ、巨塔も期待たっぷりにふるりと震える。
　お湯で流して、はい完了。

「…………っおい、こんな状態で放り出す気か！？」

「射精はたくさんのエネルギーを必要とするのよ。今体力を消耗するのはよくないわ」

「くそっ！！」

　傷口以外のすべてを綺麗にしたあとは、包帯を外して傷口を洗浄していく。

　浴槽とは別に桶に用意してもらったお湯をそーっとかければ、塗った薬は綺麗さっぱり流れて縫合部があらわになった。

「ひどい傷……。魔法薬を使えるのが明日になるんじゃ、痕が残っちゃうかもしれないわ」

　キズナオールは出来立てほやほやの怪我なら綺麗に治せるけれど、時間が経ってくっついてしまった組織には作用しない。
　変な形でくっついてしまった骨折を、あとから正常な形に戻すような真似はできないのだ。

「好・き・な・女・を守った名誉の負傷だ。痕が残ろうがなんの問題もねぇよ」

「そう、それなら……………………えっ？」