58 / 115
21~30話
美しき一角の獣【上】
しおりを挟む
ディノに声をかけられ起床した私は、敷いていたマントをはたきながら、傍らに転がるルークを見てやれやれとため息をついた。
「ルークったら、まだ起きないの?」
「いや、ルークは早くに起きてたんだが……なぁ?」
「ああ。早く起き出したばっかりに、あんな光景を……」
「?」
騎士たちの言葉に首を傾げる。
知らない間に、気絶するほど恐ろしい魔獣でも現れたのだろうか?
そう思って辺りを見ると、茂みの手前に就寝前にはなかったはずの大型魔獣の死骸が転がっていて飛び上がった。
「なにそれ!?」
「ああ、夜中にちょっとな。ダガーパンサーぐれぇなら、みんなを起こすまでもなかったからよぉ」
騎士の口振りからするに、その時間帯に起きていた見張り番だけで対処したということだろう。
横になったディノよりも一回りは大きいダガーパンサーの死骸は、動かないとわかっていても近寄りがたいほどの迫力だ。
それにしても、すぐそばで戦闘が起こっていただなんて全然気が付かなかった……。
「ディノは気付いてた?」
「当たり前だろ。ずっと眠りこけてたのはチェリアくらいだ」
「ぐぬぬ」
眠るときにはあんなに恐ろしくて寝つけなかったというのに、繊細な私としたことが……!
ディノが死骸に歩み寄り、ポンと毛皮を叩く。
「こんぐらいデカさがありゃあ、ちょうどよさそうだな」
「だろぉ? そう思って首を寸断しねぇように仕留めたんだぜ」
「……これを何かに使うの?」
私の問いかけに、ディノは複雑そうな顔で言った。
「ま、今にわかる」
騎士二人がかりでダガーパンサーの死骸を担ぎながら進むこと一刻余り。
未明の薄暗さが朝日に白く染まる頃、今回の遠征の最終目的地に到着した。
「あの木の向こうに花畑が見えんだろ? あそこから奥がユニコーンの縄張りだ」
「いよいよ私の出番ってわけね!」
ディノの説明に、気合い十分にグッと拳を握りしめる。
ここまでみんなの足を引っ張ってばかりだった私にも、ようやく真価を発揮するときが来たのだ!
「ルークったら、まだ起きないの?」
「いや、ルークは早くに起きてたんだが……なぁ?」
「ああ。早く起き出したばっかりに、あんな光景を……」
「?」
騎士たちの言葉に首を傾げる。
知らない間に、気絶するほど恐ろしい魔獣でも現れたのだろうか?
そう思って辺りを見ると、茂みの手前に就寝前にはなかったはずの大型魔獣の死骸が転がっていて飛び上がった。
「なにそれ!?」
「ああ、夜中にちょっとな。ダガーパンサーぐれぇなら、みんなを起こすまでもなかったからよぉ」
騎士の口振りからするに、その時間帯に起きていた見張り番だけで対処したということだろう。
横になったディノよりも一回りは大きいダガーパンサーの死骸は、動かないとわかっていても近寄りがたいほどの迫力だ。
それにしても、すぐそばで戦闘が起こっていただなんて全然気が付かなかった……。
「ディノは気付いてた?」
「当たり前だろ。ずっと眠りこけてたのはチェリアくらいだ」
「ぐぬぬ」
眠るときにはあんなに恐ろしくて寝つけなかったというのに、繊細な私としたことが……!
ディノが死骸に歩み寄り、ポンと毛皮を叩く。
「こんぐらいデカさがありゃあ、ちょうどよさそうだな」
「だろぉ? そう思って首を寸断しねぇように仕留めたんだぜ」
「……これを何かに使うの?」
私の問いかけに、ディノは複雑そうな顔で言った。
「ま、今にわかる」
騎士二人がかりでダガーパンサーの死骸を担ぎながら進むこと一刻余り。
未明の薄暗さが朝日に白く染まる頃、今回の遠征の最終目的地に到着した。
「あの木の向こうに花畑が見えんだろ? あそこから奥がユニコーンの縄張りだ」
「いよいよ私の出番ってわけね!」
ディノの説明に、気合い十分にグッと拳を握りしめる。
ここまでみんなの足を引っ張ってばかりだった私にも、ようやく真価を発揮するときが来たのだ!
23
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。
恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。
副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。
なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。
しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!?
それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。
果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!?
*この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
*不定期更新になることがあります。
純潔の寵姫と傀儡の騎士
四葉 翠花
恋愛
侯爵家の養女であるステファニアは、国王の寵愛を一身に受ける第一寵姫でありながら、未だ男を知らない乙女のままだった。
世継ぎの王子を授かれば正妃になれると、他の寵姫たちや養家の思惑が絡み合う中、不能の国王にかわってステファニアの寝台に送り込まれたのは、かつて想いを寄せた初恋の相手だった。
ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
せいとも
恋愛
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
表紙イラストはイラストAC様よりお借りしております。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる