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21~30話

美しき一角の獣【上】

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 ディノに声をかけられ起床した私は、敷いていたマントをはたきながら、かたわらに転がるルークを見てやれやれとため息をついた。

「ルークったら、まだ起きないの?」

「いや、ルークは早くに起きてたんだが……なぁ?」
「ああ。早く起き出したばっかりに、あんな光景を……」

「?」

 騎士たちの言葉に首を傾げる。
 知らない間に、気絶するほど恐ろしい魔獣でも現れたのだろうか?

 そう思って辺りを見ると、茂みの手前に就寝前にはなかったはずの大型魔獣の死骸が転がっていて飛び上がった。

「なにそれ!?」

「ああ、夜中にちょっとな。ダガーパンサーぐれぇなら、みんなを起こすまでもなかったからよぉ」

 騎士の口振りからするに、その時間帯に起きていた見張り番だけで対処したということだろう。
 横になったディノよりも一回りは大きいダガーパンサーの死骸は、動かないとわかっていても近寄りがたいほどの迫力だ。

 それにしても、すぐそばで戦闘が起こっていただなんて全然気が付かなかった……。

「ディノは気付いてた?」

「当たり前だろ。ずっと眠りこけてたのはチェリアくらいだ」

「ぐぬぬ」

 眠るときにはあんなに恐ろしくて寝つけなかったというのに、繊細な私としたことが……!

 ディノが死骸に歩み寄り、ポンと毛皮を叩く。

「こんぐらいデカさがありゃあ、ちょうどよさそうだな」

「だろぉ? そう思って首を寸断しねぇように仕留めたんだぜ」

「……これを何かに使うの?」

 私の問いかけに、ディノは複雑そうな顔で言った。

「ま、今にわかる」





 騎士二人がかりでダガーパンサーの死骸をかつぎながら進むこと一刻余り。
 未明の薄暗さが朝日に白く染まる頃、今回の遠征の最終目的地に到着した。

「あの木の向こうに花畑が見えんだろ? あそこから奥がユニコーンの縄張りだ」

「いよいよ私の出番ってわけね!」

 ディノの説明に、気合い十分にグッと拳を握りしめる。
 ここまでみんなの足を引っ張ってばかりだった私にも、ようやく真価を発揮するときが来たのだ!
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