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11~20話

救いの手【上】

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 沸騰寸前まで加熱したキュヴィラ水溶液の細瓶を人造の手に持たせ、水を張った器に浸けて保持させておく。

 人造の手に茎を握らせたままミレナダの葉だけをむしって乳鉢に入れ、乳鉢を人造の手に、乳棒をに持たせて磨り潰しておいてもらう。

 火にかけた小鍋の煮え具合を見つつ慎重に魔力を注ぎ足してひと息つくと、隣から声がかかった。

「おい」

「…………なによ」

 集中に水を差されてじとりとディノを振り返る。
 対するディノも、負けず劣らず不満そうな顔をしていた。

「おまえ、さっきから俺のことを『紫の手』の一部だと思ってるだろ」

「なっ――! 思ってないわよ!」

 まったく、何を言い出すかと思えば毎度失礼な!
 掴む動きしかできない手のまがい物と、意思を持って自由に動ける人間のディノを混同するわけがない。私の倫理観を馬鹿にしているのだろうか。

「人造の手は自発運動しないから、ふるいがけも磨り潰し作業も任せられないもの! ディノのほうがよーーーっぽど役に立ってるわ!」

「…………」

 褒めているのに睨まれた。
 納得がいかない。

 不平を漏らしながらもとりあえずディノの左手は作業を続けているので、慣れない環境でストレスが溜まっているのだなと寛容に受け止めてあげることにした。





 小鍋の中に薬が出来上がると、瓶詰め作業のスペースを確保するべく一度机の上を片付ける。
 器具や素材を保持したままの『手』からも、順々に手のひらの付け根をくすぐって掴んだものを回収し――

「おい、俺はくすぐっても無駄だぞ」

「あら……ついうっかり」

 誤魔化すようによしよしとディノの腕を撫でつけて、すべての『手』から回収を終えた。

 机の足元に置いていた小瓶入りの木箱が片手では持ち上げられず、もう床に置いたまま作業するかと考えていると、ディノが左手一つで軽々と抱えあげてくれた。

「どこに置きゃあいいんだ?」

「ここにお願い。ありがとう、助かったわ」

 作業しやすいよう立った状態で、箱内に隙間なく並べられた二十本の小瓶すべての蓋を外して洗浄魔法をかけ、出来たばかりの薬液を漏斗ろうとを使ってそっと注ぎ入れていく。
 漏れないようにしっかりと蓋をはめれば魔法薬の完成だ。
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