くっついちゃった！？ ～ちんちくりん魔法薬師にガサツな騎士隊長を添えて～

1～10話

目覚めの刻【中】

「――ゼマ。おまえ今、俺・を・斬る覚悟で来ただろう」

「……旦那様相手に、素手では少々分が悪いかと」

「そういうことを言ってるんじゃねぇ。なんで端はなから俺がチェリアを襲った前提なんだ」

「…………」

　黙秘である。
　たぶん理由はあるのであろうが、黙秘を咎とがめられるよりも理由を口にするほうが問題になると判断したらしい。賢明な選択だ。

　私は執事を庇うように腕を広げた。

「やめて！　ゼマさんを責めないで！」

「おまえはどういう立ち位置なんだよ……」

「私は私を守ろうとしてくれたゼマさんの味方よ！」

「クースニル様……」

「ゼマさん……！」

　奇妙な信頼関係を芽生えさせる二人に、ディノの怪訝そうな視線が注がれる。

「なんなんだ、ったく……。ゼマ、頼んどいた着替えの用意はできてんだろうな？」

「つつがなく」

「ならいい。着替えの手伝いにメイドを二、三人寄越せ」

「かしこまりました」

　来たときとは対照に、執事は物音一つ立てない優雅な所作で部屋を出ていった。




　用意してもらった婦人サイズのシャツに手持ちのコルセットスカートを合わせれば、なかなかいい感じにまとまった。
　今回はメイドの手によって袖のボタンまでキッチリと留められている。

「この服、私のために用意してくれたのよね？　ありがとう、ピッタリだわ」

「そりゃあよかった」

　ディノは就寝時と同じ型のシャツに、ズボンだけ騎士服を着用していた。

　そういえば騎士服の上衣は昨日の脱衣時に切り裂いたんだっけ……。
　無事だったとしても、まあ、腕が通せないので着られないのだけれど。

「剥離剤の作成がまだなら、今日は一日俺の仕事のほうに付き合ってほしいんだがいいか？　戻ったばっかで処理が必要な書類が溜まってんだ」

「ええ、構わないわよ」

「悪いな。急ぎのもんはなんとか今日中に処理して、明日はチェリアのほうに付き合えるようにすっから」

　意外な返答に目を瞬く。