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番外編

b、私は年越しをわかっていない

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「おはよう、マヤ。新たな歳神の昇御と新年のよろこびを共に」

「ん……ガル様……。あっ、あけましておめでとうございます」

「あけまして? マヤのいた世界での挨拶か?」

「はい。年が明けたことをお祝いする、新年の挨拶です」

「そうか。あけましておめでとう、マヤ」

 両脇を支えスポッとベッドから引き抜かれると、ガルの腕に抱き上げられたまま居室へと向かう。
 ガルもまだ寝衣姿なので、目覚めてすぐに声をかけてくれたようだ。



「……あれ?」

 居室に入ってすぐ、微かな違和感に首を傾げる。

 昨夜見た光景と何かが違っているような……。

「あっ! ワイン!」

 ガルに下ろしてもらい、ぱたぱたとローテーブルに駆け寄る。

 深緑色のワインボトルと、グラスが三つ。
 しかしグラスのうちの一つだけ、入っていたはずの赤ワインが綺麗さっぱりなくなっているのだ。

「……? ガル様、飲みましたか?」

 手に取ってまじまじと見れば、グラスには一滴のワインもなく、磨き上げたかのようにぴかぴかに輝いている。

「歳神が呑んだんだろう。……どうやらこの酒を随分と気に入ったようだ」

 その言葉に隣に立ったガルを見上げると、ガルが照明にかざしたワインボトルが空っぽになっているのが見えた。

「…………本当に、神様っているんですね……」

「ふっ、当たり前だろう」

 ボトルをテーブルに戻したガルは、ワインの入ったグラスを取り上げ、一つを手渡してくれる。

「飲めなければ唇に触れさせる程度で構わない。……新年の慶びに」

「し、新年のよろこびに!」

 差し出されたグラスに、グラスを合わせる。

 チィンッ


 好奇心でペロリと舐めたワインはとても渋くて、大人の味がわかる日はまだまだ遠そうだとガルの横顔を見つめるのだった。





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あけましておめでとうございます。

去年は拙作をお読みいただきありがとうございました!

本年は、2月の恋愛小説大賞に合わせて新連載を投稿します。
本年もどうぞよろしくお付き合いくださいませ(uωu*)
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