ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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番外編

4c、私は冬の景色をわかっていない

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 太い枝、細い枝、葉っぱに木の実。
 使えそうなものを手当たり次第収穫して、雪だるまの元に戻る。

 雪だるまの顔は炭を埋め込むのが一般的なのだと話すとガルが枝の表面を炎で焦がしてくれたので、短く折ってもらった太い枝を垂直に刺して黒い目に、細い枝でにこっと笑う口をつけてみた。
 ボディの左右に手となる枝を刺して……

「できたー!」

 今度こそ、ちゃんと顔のある雪だるまの完成だ!

「なんだかマヤに似ているな」

 雪だるまと私を交互に見つめたガルが、ふっと目を細める。

「私、ですか?」

 小さな丸い雪だるまを見つめる。
 確かに白いコートを身につけて着ぶくれした自分は雪だるまのように丸々していたし、そう言われると似ているような気がしないでもない。———それならば。

 私はその場にしゃがみ込むと、また大きな雪玉を作りはじめた。

「俺も手伝おう」

「じゃあ、これより一回り大きい丸を作ってくれますか?」

 小さな雪だるまのボディを指して伝えれば、ガルは任せておけと力強く頷いてくれた。



 目には赤い木の実を埋めて、突き出た枝の鼻と、口には真っ直ぐな枝を一本。

「……ふふっ」

「これは……俺、か?」

 小さな雪だるまの隣に作った、大きな雪だるま。
 ガルが作ってくれたボディは随分大きくて、結局小さな雪だるまの二倍近い身長になってしまった。

「そうです。ちっちゃいのが私で、おっきいのがガル様!」

「仲が良さそうだな」

 ガルが愛しげに小さな雪だるまの頭を撫でる。
 雪だるまの手に刺した枝同士が重なり、まるで小さな雪だるまの手が大きな雪だるまの腕に掴まっているかのように見える。

「仲良く湖を見てますね。この子達は、冬の間ずっとこの景色を見ていられるのかな」

「…………持ち帰るのはやめておくか」

 ガルは深刻な決断でもしたかのように呟いて、僅かに肩を落とした。
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