ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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番外編

3c、私は冬の景色をわかっていない

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「マヤ様、領主様をよろしく頼んまさぁ。優しいお人なんだ」

 ふいと顔を上げしっかりと私の目を見た男は、今度こそ嬉しそうにくしゃりと顔を綻ばせた。

 ああ……なんだ。皆、ちゃんとわかってるんだ。
 ガルがどんなに優しい人か。
 どんなに自分達を思ってくれているか。

 目が合わせられなくたって、心はちゃんと伝わっているから。

 嬉しさに、私も頬を緩ませて大きく頷いた。

「はいっ! 任せてください!」




 お礼を言いながら去っていく男達を見届けると、ガルはまた先ほどのように複数の炎を出して水浸しの地面をあぶり始めた。

「?」

「このまま水が凍りついては、滑ってしまって危険だからな。水気を飛ばしているんだ」

 仕上げに土の露出する部分と雪道との境界を足で踏み慣らして、ようやくすべての作業が完了したようだ。

「さて、待たせたな。撤去作業など退屈だったろう」

「いいえ。ガル様はすごいなぁって……一緒に来られてよかったです!」

 魔法で炎を出現させたことも勿論すごかったけれど、それ以上に、何よりも人々の安全を考えて行動する姿や、領民達から慕われているらしいこと。知らなかったガルの一面を見られたことが嬉しい。

 そうして新しい一面を知るたび、私は何度でもガルを好きな気持ちを再確認するのだ。

 ちゅっ

「!」

 冷たい唇が触れる。
 後頭部を支えられ、隙間を割って入り込んだやわらかな熱が、味わうようにぐるりと口腔をねぶって離れた。

「……あまり愛らしい顔をするな。まだ見せたいものがあるというのに、今すぐ屋敷へ戻りたくなって困る」

「そっ……」

 そんなことを言われても!
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