ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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番外編

3a、私は冬の景色をわかっていない

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 すっかり遮るもののなくなった道を通り、馬を引いて男達がこちらにやってくる。

「すげぇなー、あんちゃん!」
「ありがとなぁー! それにしても転移で木を運んじまうたぁとんでもねぇ魔力りょ———領主様っ!?」

 男達はガルの顔を確認するなり、サッと顔色を失った。
 先ほどまでの笑みが消えてオロオロと視線をさ迷わせ、全身をひどく強張らせている。

「寒さにやられた者というのは? 必要であればすぐ医者の元に運ぶが」

「いや……、いえっ! そこの荷台で毛布にくるまって休んでんで、領主様のお手を煩わせるほどのことはありませんでさぁ! なぁ!?」

 馬に引かれた荷車の上、沢山積まれた荷物の隅で、毛布の塊から顔だけを覗かせた男がペコペコとお辞儀する。
 自分で動けているし、意識もはっきりとしているようだ。

「そうか」

 ガルは軽く頷いて、荷車が通りやすいよう道の中央を譲った。

 ———やはり皆、ガルの赤い瞳を見るとどうしても怯えてしまうのだろうか。
 ガルは手紙を受け取ってすぐにここに駆けつけ、苦手だという細かな魔法操作までしながら、道の整備に力を尽くしたというのに……。

 話も終わりそのまま通り過ぎるかと思われた男達だったけれど、通り過ぎ様に立ち止まりまだ何か言いたげにチラチラとこちらを見てくる。
 男の一人とばっちり目が合った。

「…………あのっ、領主様」

「なんだ?」

「そちらのお嬢さんは、一体どなたで……?」
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