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番外編
2c、私は冬の景色をわかっていない
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私も下りて掘るのを手伝おうとモゾモゾしていると、私を抱くガルの腕がぎゅっと強まる。
「危険だから、マヤはしっかり俺にくっついていてくれ」
「! はいっ」
ガルも数歩後ろへ下がり、雪壁から十分に距離を取る。
何をするのだろうと見ていれば、ガルが軽く手を振ったと同時に雪壁の上に炎の魂が五つ、ボボボッと音を立てて現れた。
「!!?」
横一列に並んだ三十センチほどの炎の魂は、ガルが微かに指先を動かすのに合わせ、じりじりと下降しながら雪を溶かしていく。
炎が雪の表面を撫でるように移動すれば、雪が水になり、水が蒸気へと変わって、辺り一帯に濛々と白い湯気が立ち上る。
「すごい……! 本物の魔法って初めて見ました」
「? いつも転移を見ているだろう」
注意深く炎を見つめる瞳は動かさないまま、ガルが不思議そうに答える。
「あっ」
言われてみればそうだった。
現象が目の前に表れないだけで、転移だって立派な魔法だ。
「魔法で何かが出るのを見るのが初めてで……つい……、すみません」
「なに、マヤが見たいのならこれくらい、いつだって見せてやる」
ガコンと音を立てて、支える雪を失った倒木がぶつかり合った。
雪が減っていくにつれて視界が開け、向こう側に人の姿が見えてくる。
荷車を引いた馬が一頭と、男の人が二人。ぶんぶんと手を振ったり、拍手をしたり、ガルの作業を応援してくれているようだ。
「危険だから、マヤはしっかり俺にくっついていてくれ」
「! はいっ」
ガルも数歩後ろへ下がり、雪壁から十分に距離を取る。
何をするのだろうと見ていれば、ガルが軽く手を振ったと同時に雪壁の上に炎の魂が五つ、ボボボッと音を立てて現れた。
「!!?」
横一列に並んだ三十センチほどの炎の魂は、ガルが微かに指先を動かすのに合わせ、じりじりと下降しながら雪を溶かしていく。
炎が雪の表面を撫でるように移動すれば、雪が水になり、水が蒸気へと変わって、辺り一帯に濛々と白い湯気が立ち上る。
「すごい……! 本物の魔法って初めて見ました」
「? いつも転移を見ているだろう」
注意深く炎を見つめる瞳は動かさないまま、ガルが不思議そうに答える。
「あっ」
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「魔法で何かが出るのを見るのが初めてで……つい……、すみません」
「なに、マヤが見たいのならこれくらい、いつだって見せてやる」
ガコンと音を立てて、支える雪を失った倒木がぶつかり合った。
雪が減っていくにつれて視界が開け、向こう側に人の姿が見えてくる。
荷車を引いた馬が一頭と、男の人が二人。ぶんぶんと手を振ったり、拍手をしたり、ガルの作業を応援してくれているようだ。
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