ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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番外編

1c、私は冬の景色をわかっていない

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 私を左腕に抱きあげたまま門を出たガルに、コート姿のメイド長が追随する。
 いつもなら門の内側から見送ってくれるのにと不思議に思っていると、ガルが言った。

「向こうにも使用人は置いているが、慣れた者の方がマヤも安心できるだろう?」

「じゃあ、リーファさんも一緒に?」

「はい、微力ながらお供させていただきます」

 皆で出かけるなんて、ますます旅行っぽい!

「行くぞ」

「はい!」

「失礼いたします」

 慣れた様子で、メイド長はガルの差し出した手に手を重ねる。
 右手には宿泊の荷物だろう大小の鞄を下げて、左手は革手袋を着けたガルの手のひらの上に。

 なるほど身体の一部が接触していれば抱きあげなくても一緒に転移できるのか、と感心している間に、目の前の景色が白銀に染まった。



「わ……!」

 冷たい空気がツンと鼻腔を刺す。
 澄んだ青空。温度のない真っ白な太陽に照らされて、辺り一面に積もった白雪がキラキラと輝く。

 王都の冬は穏やかなものだし、元の世界でだって雪なんてめったに見たことがない。
 なんでもない雪なのに妙にワクワクしてしまうのは、旅行に浮かれているせいだろうか。ガルと一緒だからだろうか。

「屋敷の準備は任せたぞ。日暮れ前には戻る」

「かしこまりました」

 二人のやり取りを耳に後方を振り返れば、すぐそこに大きな鉄柵の門があった。

「ここが……ガル様のお屋敷ですか?」

 雪の一片ひとひらも付いていない綺麗な門を見上げる。
 庭が広大なためか柵の間を覗いても、建物は影も形も見えないけれど。

「ああ。しかし父も王都で騎士をしていたから、この屋敷へはたまの長休みに来るぐらいだったな」

「へぇー」

 ガルにとっても、帰省というより旅行に近いのかもしれない。

「先に用を片付けに行くが、マヤも一緒に来てくれるか?」

「はい!」

 しっかりと頷いて、くるりとメイド長に向き直る。

「リーファさん、いってきますね」

「お気をつけていってらっしゃいませ」

 メイド長の綺麗なお辞儀に見送られ、ガルと私は再びその場から転移した。
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