ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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101~最終話

107b、愛がわかったそのあとに3

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 乾杯を求めておずおずと近づいて来た一人と乾杯すれば、他の使用人達もどっと乾杯に押し寄せた。
 この国の成人は十五歳とはいえなんとなくはばかられて、私はジュースでの乾杯だ。

 苺がふんだんに使われたデザートを全種類制覇すると、もう食後のお茶を飲むのも辛いほどにお腹はパンパンだった。

「うぅ……食べすぎて苦しい……」

「薬でも持ってこさせるか?」

「いえ、休めば大丈夫です……。けど、しばらくは動けそうにありません」

「その点は問題ないな」

 ガルがこめかみに唇を寄せ、ちゅっと口付ける。
 確かに、ガルに抱っこされて移動していれば、一歩も歩く必要はない。

「あっ、でもすごくいっぱい食べたので、かなり重たくなっちゃったかも……」

 楽しい雰囲気に釣られていつもの倍以上は食べた。体感では十キロくらい増えていそうだと真剣に眉をひそめれば、ガルがたまらず吹き出した。

「くっ、……っふ、ははっ! なに、問題ない。くくっ、マヤがどんなに重くなろうと、その分俺が鍛えればいいだけだ」

 喋りながらもまだくつくつと笑っている。
 これまでも何度か笑顔は目にしたことがあるけれど、こんなに楽しそうに笑うガルを見るのは初めてだ。

 きっと、今の会話だけが理由じゃない。
 ガルも今日の日を心の底から喜んで、一緒に楽しい気持ちになってくれているのだ。

 嬉しくて、私もにっこりと笑みを返す。

「ふふっ、それなら太っちゃっても安心ですね」

「ああ、ずっと俺の腕の中にいればいい」

 ガルしか見えていない私には、その笑顔を目にした使用人達が揃って目玉が飛び出そうなほど驚愕していることなど知る由もなかった。
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