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101~最終話
104a、【終】ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない
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扉側を向いたまま並んで立っていると、ガルが首を傾げてこちらを覗き込んだ。
「マヤ、緊張しているか?」
「え?」
「今日はずっと表情が固い」
そう言って、空いた右手でちょんと頬を突つかれる。
「あ……、すみません……」
指摘する言葉とは裏腹に楽しげな様子のガルを直視できなくて、じっとスカートの膨らみに視線を落とす。
私は何をしているんだろう。
この世界でガルと結婚したところで、元の世界に戻されては何の意味もないのに。
誓約も契約も、すべて意味を失うのに。
ガルは……それでもいいのだろうか。
「なに、心配することはない。儀式といっても簡単なものだ。何度か参列したことがあるが、真っ直ぐ祭壇まで歩いていって水晶玉のような魔具に手を触れ、司祭の言葉に沿って永遠の愛を誓い合うだけだ。難しいことは何もない」
「永遠の、愛……?」
「ああ」
ガルが大きく頷く。
……ダメだ。ダメ。これを口にしては何かが終わってしまう。もう知らない振りをしてこれまで通り過ごすこともできなくなる。ダメ。ダメなのに——————
心の内に燻り続けた不安が、猜疑心が、悲しみが。膨らみきって出口を求め、とうとう抑えきれずに口から溢れ出た。
「……っ、ガル様は、誓えるんですか……?!」
「マヤ、緊張しているか?」
「え?」
「今日はずっと表情が固い」
そう言って、空いた右手でちょんと頬を突つかれる。
「あ……、すみません……」
指摘する言葉とは裏腹に楽しげな様子のガルを直視できなくて、じっとスカートの膨らみに視線を落とす。
私は何をしているんだろう。
この世界でガルと結婚したところで、元の世界に戻されては何の意味もないのに。
誓約も契約も、すべて意味を失うのに。
ガルは……それでもいいのだろうか。
「なに、心配することはない。儀式といっても簡単なものだ。何度か参列したことがあるが、真っ直ぐ祭壇まで歩いていって水晶玉のような魔具に手を触れ、司祭の言葉に沿って永遠の愛を誓い合うだけだ。難しいことは何もない」
「永遠の、愛……?」
「ああ」
ガルが大きく頷く。
……ダメだ。ダメ。これを口にしては何かが終わってしまう。もう知らない振りをしてこれまで通り過ごすこともできなくなる。ダメ。ダメなのに——————
心の内に燻り続けた不安が、猜疑心が、悲しみが。膨らみきって出口を求め、とうとう抑えきれずに口から溢れ出た。
「……っ、ガル様は、誓えるんですか……?!」
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