ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

９１～１００話

１００a、私は執務室の中をわかっていない

「九日間？」

　言われた言葉の意味が飲み込めず、私を抱いて座るガルの顔を見上げる。

「ああ。挙式前の九日間、婚姻を結ぶ男女が互いに顔を合わせるのは縁起が悪いとされている。……相手の姿を装った悪魔が魂を拐いにやってくる、だったか」

「じゃあ……明後日から式当日まで、一切会っちゃダメってことですか？」

「そうなるな……。俺が屋敷を出て宿に泊まる。執事エンカムは連れていくがメイド長リーファ達は残していくから、マヤは安心していつも通り過ごすといい」

「そんな、お屋敷を出るなら私の方です」

　ふるふると頭かぶりを振る。

　だってここはガルの家だ。ガルが出ていくなんておかしい。
　それにガルがいないのだったら、屋敷にいたところで全然いつも通りではないのだから。

「それはダメだ。マヤを宿に泊まらせて、万一何かあったらどうする」

「でも……」

「九日の辛抱だ……、俺もマヤと離れるのは身を裂かれるように辛い」

　温かな体温がぎゅっと私を包み込む。
　少しでもガルの温もりを覚えておこうと、私も精一杯腕を伸ばして抱きしめ返した。