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91~100話
100d、私は執務室の中をわかっていない
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ガルの部屋ほどの広さはない。
正面には見るからに重たそうな、どっしりとした木製の書き物机が鎮座している。赤みを帯びた深い焦げ茶色のそれは、私が寝そべれそうなほどの大きさだ。
背後にある大きな窓はカーテンが開かれているので、室内は明るかった。
ガルの邪魔にはなりたくないし、仕事の書類を見てしまうのもまずいだろうと遠慮していたから、実は執務室に入るのはこれが初めてだ。
きょろきょろと左右を見ながら、室内へ足を踏み入れる。
正面の机と直角に向き合う形で置かれた一回り小さな書き物机は……それでも十分大きいけれど、これは恐らく執事が使うものだろう。
執事もガルについて留守にしているので、今は無人だ。
壁には分厚い本のぎっしり詰まった本棚。飾り棚の上にまで本が並んでいる。
深い色味で統一され、飾り気がなくて、執務に集中しやすいようにと整えられた室内は、なんだか真面目なガルらしかった。
「ふふっ」
少し気持ちが上向いて、その場でくるりと回って室内を見渡す。
移ろう視界がある一点を通過して、バッと視線を戻した。
「え……? あれはまさか……」
嫌な予感を覚えながらも恐る恐る、妙に既視感のあるソレに近づいていく。
ドアの並びに据えられた飾り棚の上方、壁にかかった小振りな額縁。
中に入れられた、なんの変哲もない白っぽい紙。
———そこには、ミミズののたうつような稚拙な文字で、ガルの名前が綴られていた。
正面には見るからに重たそうな、どっしりとした木製の書き物机が鎮座している。赤みを帯びた深い焦げ茶色のそれは、私が寝そべれそうなほどの大きさだ。
背後にある大きな窓はカーテンが開かれているので、室内は明るかった。
ガルの邪魔にはなりたくないし、仕事の書類を見てしまうのもまずいだろうと遠慮していたから、実は執務室に入るのはこれが初めてだ。
きょろきょろと左右を見ながら、室内へ足を踏み入れる。
正面の机と直角に向き合う形で置かれた一回り小さな書き物机は……それでも十分大きいけれど、これは恐らく執事が使うものだろう。
執事もガルについて留守にしているので、今は無人だ。
壁には分厚い本のぎっしり詰まった本棚。飾り棚の上にまで本が並んでいる。
深い色味で統一され、飾り気がなくて、執務に集中しやすいようにと整えられた室内は、なんだか真面目なガルらしかった。
「ふふっ」
少し気持ちが上向いて、その場でくるりと回って室内を見渡す。
移ろう視界がある一点を通過して、バッと視線を戻した。
「え……? あれはまさか……」
嫌な予感を覚えながらも恐る恐る、妙に既視感のあるソレに近づいていく。
ドアの並びに据えられた飾り棚の上方、壁にかかった小振りな額縁。
中に入れられた、なんの変哲もない白っぽい紙。
———そこには、ミミズののたうつような稚拙な文字で、ガルの名前が綴られていた。
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