ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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91~100話

98b、私は奥に秘められたものをわかっていない2

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「…………あ、あのっ! ガル様のお母様は……もしかしたらずっと、ガル様と向き合おうとしてたんじゃないかと思うんです……!」

 確かな根拠なんてない。
 そうであってほしい。そうであったらいいのに。
 自分の願望が多分に混じった、都合のいい想像。

「メラニーさんに聞いたんです。お母様の好きな花はジャスミンだったって。色も淡い色が好きだったって。それなのに、ここのお庭にはあんなにたくさんの真っ赤な薔薇が植わってて……」

 メラニーの話を聞いて、ずっと違和感があった。
 ガルのお母さんはなぜ、ドレスのモチーフに選ぶほど好きなジャスミンよりも大量に、真っ赤な薔薇を植えさせたのか。
 ゆっくり眺められるようにと、中央にテーブルセットまで据えて。

「前に言ったかもしれないですけど……お庭の薔薇、私は、ガル様みたいだなって思うんです。雰囲気も……綺麗な赤い色も」

「……ああ、覚えている」

 ガルはゆっくりと刺繍から視線を外し、真っ直ぐに私を見つめた。

「もしかしたら、ガル様のお母様も……あの赤い薔薇に、ガル様を重ねて見てたんじゃないかなって……」

 強すぎる魔力に———ガルの瞳に脅える気持ちは、私にはどうしてもわからないけれど。

「お母様はガル様の前から逃げてしまったけど……いつかちゃんと向き合えるように、ガル様の瞳に似た花を見つめて慣れようとしていたのかもしれない」

 下ろした腕の先で、ぎゅっと拳を握りしめる。
 こいねがう気持ちと、過去を思うやるせなさと、……勝手なことを口にしているという、自覚と。
 ぐちゃぐちゃに感情が入り交じって、知らず涙が込み上げてくる。
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