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91~100話
92d、ご主人様は深夜の人影をわかっていない
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「全員降りろと言ったはずだ」
「……お前ぇ、何を知ってる?」
言葉の意味を推し測るように、すっと男の目が細められた。
「答える義理はない」
マントフードを深く被り、油断なく剣を構える。
「……チッ! おい、お前らも来い! 相手はたった一人だ!」
視線はこちらに向けたまま男が後方へと声をかければ、遅れてもう二人、剣を手に男達が躍り出た。
二対一では分が悪いと判断したのだろう。
四人の男達は距離を保ったままじりじりと、俺を取り囲むように移動していく。
「……かかれ!!」
ご丁寧にも掛け声と共に、男達が一斉に飛び掛かった。
深く身を屈めてぐっと踏み込み、三方の攻撃をかわすように正面の男の懐に潜り込む。
剣を振り上げた男のがら空きの胴へ剣を振り抜き———かけて寸でのところで手を捻ると、横腹へ思い切り柄頭を叩き込んだ。
そのまま右手で剣を振り抜き、背後に迫った剣を薙ぎ払って立つ。
どうっと崩れ落ちた男は、腹を抱え自らの吐瀉物にまみれた。
続く左からの攻撃を剣で受け、勢いを殺さぬまま滑らせるように右へといなせば、バランスを崩しつんのめった男が俺の前を横切るように数歩踏み出す。
目下に差し出された後頭部へと柄頭で一撃見舞えば、強かに顔面を地に打ち付けて沈んだ。
続いて攻撃を仕掛けようとしていた二人が倒れた仲間に怯んだ隙に、横並びの男の一方へ自ら間合いを詰めて下から剣を跳ね上げる。
残る一人を男の背後直線上に捉えると、剣ごと腕を跳ね上げられ隙だらけの胸部へ渾身の踵蹴りを見舞った。
ごろごろと縺れ合うように転がった男達は、数十歩ほど離れた先でそのままくたりと動かなくなる。
手前の男は元より、後ろにいた男も吹き飛んだ衝撃で頭部を強打していたので、しばらくは意識も戻らないだろう。
男達が全員動かなくなったのを確認した俺は、先ほどから馬車の陰でこそこそと動く人影へと足を向けた。
「……お前ぇ、何を知ってる?」
言葉の意味を推し測るように、すっと男の目が細められた。
「答える義理はない」
マントフードを深く被り、油断なく剣を構える。
「……チッ! おい、お前らも来い! 相手はたった一人だ!」
視線はこちらに向けたまま男が後方へと声をかければ、遅れてもう二人、剣を手に男達が躍り出た。
二対一では分が悪いと判断したのだろう。
四人の男達は距離を保ったままじりじりと、俺を取り囲むように移動していく。
「……かかれ!!」
ご丁寧にも掛け声と共に、男達が一斉に飛び掛かった。
深く身を屈めてぐっと踏み込み、三方の攻撃をかわすように正面の男の懐に潜り込む。
剣を振り上げた男のがら空きの胴へ剣を振り抜き———かけて寸でのところで手を捻ると、横腹へ思い切り柄頭を叩き込んだ。
そのまま右手で剣を振り抜き、背後に迫った剣を薙ぎ払って立つ。
どうっと崩れ落ちた男は、腹を抱え自らの吐瀉物にまみれた。
続く左からの攻撃を剣で受け、勢いを殺さぬまま滑らせるように右へといなせば、バランスを崩しつんのめった男が俺の前を横切るように数歩踏み出す。
目下に差し出された後頭部へと柄頭で一撃見舞えば、強かに顔面を地に打ち付けて沈んだ。
続いて攻撃を仕掛けようとしていた二人が倒れた仲間に怯んだ隙に、横並びの男の一方へ自ら間合いを詰めて下から剣を跳ね上げる。
残る一人を男の背後直線上に捉えると、剣ごと腕を跳ね上げられ隙だらけの胸部へ渾身の踵蹴りを見舞った。
ごろごろと縺れ合うように転がった男達は、数十歩ほど離れた先でそのままくたりと動かなくなる。
手前の男は元より、後ろにいた男も吹き飛んだ衝撃で頭部を強打していたので、しばらくは意識も戻らないだろう。
男達が全員動かなくなったのを確認した俺は、先ほどから馬車の陰でこそこそと動く人影へと足を向けた。
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