ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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91~100話

91b、ご主人様は入念な準備をわかっていない

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「それにしても、なんだその大荷物は」

 ウィルドの肩に背負われた大きな袋を見る。

「いやー、何が起こるかわかんねーだろ? 『敵と視るより先ず剣を抜け』ってね。何事も備えておくに越したことはない」

「……それで、俺は屋敷に侵入して悪事の証拠となりそうなものを持ち出せばいいんだな?」

 自慢気に袋を掲げてウィンクを飛ばしてくるウィルドを視界から外し、本題に入る。
 さすがに二人で忍び込んでは目につきすぎるからと、屋敷内への侵入は俺単独で行うこととなった。

「ああ。だが、なるべくならすぐには持ち出したことを悟られないようにしたい。先に対策を練られても厄介だからな」

「わかった。では、いってくる」

「あ、ちょい待ち!」

 屋敷へ踏み出そうとすれば、即座に声がかかる。

「ガリュース、最終確認だ」

「はぁ……。『傷つけない、殺さない、姿を見られない』、これでいいか?」

 俺は何度目になるかわからない呪文のような言葉をうんざりと繰り返し、満足気なウィルドに見送られて路地裏を後にした。



————————————

 ※注釈

『敵とるよりず剣を抜け』
 意味:対峙した相手が敵かどうかを判断するよりも、まずは剣を抜いて構えるべしという教え。転じて、予め入念な下準備をしておくこと。


 転ばぬ先の杖、備えあれば憂いなし、的な意味で作った異世界慣用句です(*´∀`)(造語
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