ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

８１～９０話

９０b、ご主人様は愛玩の意味するところをわかっていない

　机に肘をつき、組んだ手に額を預ける。

　口にするかすまいかと逡巡し、マヤが愛玩奴隷であったことを知るウィルドにならば話してもいいかと結論付けた。

「俺は自分が赦せん」

「……どういう意味だ？」

「マヤは奴隷商人に騙され、望まずして愛玩奴隷となったらしい」

「へぇ、そりゃ災難だったな」

「災難などという言葉で片付くものかっ！」

　ダンッと机に拳を叩きつけ、ぎりりと握り込む。

「俺は……俺が、この手でマヤの自由を奪ったんだ」

「……は！？　いやいや、悪いのはマヤちゃんを騙した奴隷商人だろ！？」

　ウィルドは慌てた様子で机に身を乗り出す。

「買った俺も同罪だろう」

「おいおい、やめろよ。んなことねーって！　マヤちゃんだってお前に買われてよかったと思うぞ？　売られてたんなら結局は誰かに買われてたんだろうし」

「しかし……」

「あのなー、他の奴に買われてたら今頃マヤちゃんどうなってたと思う？」

　ウィルドは聞き分けのない子どもを窘たしなめるように言って、ギッと椅子の背に凭れた。

「それは……愛らしいマヤのことだ。どこへ行ったとしても大切に可愛がられたことだろう」

「ガリュース、なんか勘違いしてるみたいだから言っとくがな、『愛玩奴隷』ってのは本来痛めつけるなり性的になり主人の好きに弄ばれる目的で買われんだよ。愛玩動物ペットのそれとは違って、ただ可愛がられてりゃ済むってもんじゃねーの。オーケー？」

　そう言って両手の平を上に向け、大袈裟に首を傾げて見せる。