372 / 486
81~90話
88c、私は隠し場所をわかっていない
しおりを挟む
「これ全部……本当に使っちゃっていいんですか?」
「はい、勿論でございます」
戸惑う私の問いをメイド長がすんなりと肯定する。
「でも……」
横目でローテーブルを見る。
上に置かれているのは、裁縫用具の入ったお洒落な小箱に、大小の刺繍枠や色とりどりの美しい刺繍糸が詰め込まれたバスケット。
刺繍をするため手芸用品を貸してほしいと頼んだのは私だけれど、使用人が使うようなちょっとした物を貸してもらえればと思っていただけなのだ。
しかし実際に持ち込まれたこれらは、あまりにも豪華すぎる。
「これってもしかして……ガル様のお母様の物じゃ……?」
「はい、こちらは大奥様がお使いになっていた物です。マヤ様へは、遺品、財産含め屋敷内のすべての物を自由にお使いいただいて構わないと旦那様より申しつかっておりますので。……新しい物をご用意した方がよろしいでしょうか?」
「いえいえっ、これで大丈夫です! ありがとうございます!」
こんな立派な手芸用品があるのに新たに買い揃えるなんてとんでもない!
しかし、遺品や財産まで自由にって……さすがに私を甘やかしすぎでは!?
とりあえず今は、買い足すことなくある物を借りられるだけ良しとしよう。思った以上に豪華だけれど。
「はい、勿論でございます」
戸惑う私の問いをメイド長がすんなりと肯定する。
「でも……」
横目でローテーブルを見る。
上に置かれているのは、裁縫用具の入ったお洒落な小箱に、大小の刺繍枠や色とりどりの美しい刺繍糸が詰め込まれたバスケット。
刺繍をするため手芸用品を貸してほしいと頼んだのは私だけれど、使用人が使うようなちょっとした物を貸してもらえればと思っていただけなのだ。
しかし実際に持ち込まれたこれらは、あまりにも豪華すぎる。
「これってもしかして……ガル様のお母様の物じゃ……?」
「はい、こちらは大奥様がお使いになっていた物です。マヤ様へは、遺品、財産含め屋敷内のすべての物を自由にお使いいただいて構わないと旦那様より申しつかっておりますので。……新しい物をご用意した方がよろしいでしょうか?」
「いえいえっ、これで大丈夫です! ありがとうございます!」
こんな立派な手芸用品があるのに新たに買い揃えるなんてとんでもない!
しかし、遺品や財産まで自由にって……さすがに私を甘やかしすぎでは!?
とりあえず今は、買い足すことなくある物を借りられるだけ良しとしよう。思った以上に豪華だけれど。
0
お気に入りに追加
3,299
あなたにおすすめの小説


好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる