ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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81~90話

88a、私は隠し場所をわかっていない

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 仮縫いのドレスを着る。
 レースなどの細かな装飾は付けられていない、ベースだけのドレス。

 生まれてこの方既製品の服しか着たことのない私にとって、布が身体に添ってぴたりとフィットするのはなんとも不思議な感覚だ。

 上半身は身体のラインに沿ってすっきりと、下はたっぷりとしたスカートが華やかにふわりと広がる。
 このままでも十分素敵なドレスになるだろうに、ここにさらに手が加わるなんて仕上がりが想像もつかない。

「こうしてこのお屋敷でドレスをお仕立てしていると、大奥シュトリーゼ様のご健在の頃を思い出しますわ」

 仮縫いのドレスを着付けながら、メラニーが感慨深げに溢す。

 忙しそうなガルの休みに合わせていては作業が進まないからと、ドレス店の店主メラニーはガルが仕事で留守の日にもこうしてドレスの打ち合わせのため屋敷を訪れるようになった。

 めったに使われない応接室の中に大きな姿見を運び込み、中にはメラニーと同伴の女性スタッフ一人、それに私と、ガルから私を任されたメイド長も脇に控えてくれている。

「ここへはよく来られてたんですか?」

「ええ、ええ、ガリュースお坊ちゃまのお生まれになる以前から、シュトリーゼ様にはご贔屓にしていただいて」

 昔を懐かしむように目を瞑ってうんうんと頷きながらも、手だけはテキパキと動いて縫い目のラインを微調整していく。

「あの……ガル様のお母さ……まって、どんな方だったんですか?」

 ガルの存在ごとすべてを拒絶した母親とは、どんな人だったのだろうか。
 ガルの思い出の中には、遠くから眺める母親の姿しかなかったから。

「そうですわねえ……。とても繊細でお優しく、陶器でできたお人形のように美しい方でいらっしゃいましたわ」

 容姿だけなら、以前ガルに姿絵を見せてもらったことがある。
 きりりとして雄々しいお父さんと、儚げな美貌のお母さん。二人並んだ、夫婦だけの姿絵。
 ガルは目元がお父さん似、口元がお母さん似だと思った。

 けれど……

優しい・・・……?」
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