ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

８１～９０話

８１d、私はご主人様の家族をわかっていない

そっと抱擁を解くと、ガルの膝の上で居ずまいを正し、しっかりとガルの目を見つめる。

「前に、『私に家族はいない』って言ったこと……嘘、ではないんですが……ちょっと違うんです」

「……」

ガルは無言で続きを促す。
その瞳の優しさに勇気づけられて、私はついにすべてをガルに打ち明けた。

「信じてもらえないかもしれませんが……私は、この世界とは別の、異世界から来たんです。魔法も、魔力もない世界。その世界で事故に遭いそうになった瞬間、目の前が真っ白になって…………気付いた時には、こっちの世界にたった独りで放り出されていました」

「異世界……」

言葉の意味を咀嚼し飲み込もうとするように、ガルがぽつりと繰り返す。
呟きにコクリと一つ頷きを返して、話を続けた。

「なので、私の家族も死んだ訳ではなくて。元の世界では……両親も、兄も、生きてはいるんです。でも…………」

……本当に言ってしまっても大丈夫だろうか。
別の世界から来たなんていう荒唐無稽な話以上に、口にするのが躊躇われる。

異世界転移を信じてもらえないだけならまだいい。でも、これを伝えてしまったら。

愛されていなかったと知られてしまったら。

今は好きだと言ってくれているガルも、実は私が無価値な人間だと気付いて、愛想を尽かしてしまうかもしれないから。

怖い。

不安と緊張に冷えていく身体に、不意に温かな手の平が触れた。