ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

文字の大きさ
上 下
329 / 486
71~80話

78b、私はプレゼントをわかっていない

しおりを挟む
「……あー、その……気を悪くしないだろうか」

思案するように上へ下へと視線をさ迷わせていたガルが、ゴクッと喉を鳴らし、意を決したように口を開いた。

「? 怒ったりなんてしませんよ」

自分から望みを聞いておいて、伝えられた望みに対して怒ったりなどするわけがない。

「着てみてほしい物があるんだが……」

ガルは制服の胸元をガサゴソと探り、平たい包みを一つ取り出して私に手渡した。

渡された茶色い蝋引ろうびきの紙袋を見る。
着てほしいということは服が入っているのだろうが、それにしては妙に袋が薄っぺらい。

訝りながらも、簡単にテープで止められただけの封を開けて中身を取り出した。

「…………何ですか、これ……」

いや、わかる。わかりはするのだが、脳が理解を拒否している。

両手で摘まみ上げた細い肩紐の下に続くのは、透けた白いシフォン地の身頃。
胸の中央にはリボン、所々に同色糸で花の刺繍が施され、縁にはたっぷりとフリルがあしらわれている……が、透ける布地部分を通せば向こう側に見えるガルの制服のボタンだって数えられそうだ。

「あー……寝衣、だな」

本気で言っているのかとガルを見れば、ついと視線を逸らされた。

私が手にしているのは、可愛らしくひらひらとした、透け透けの白いベビードール。

「こんな物どうしたんですか……」

「その、今日の祝いにと……知人・・から貰ってな……」

ガルにプレゼントを贈るほど親しい人物など一人しか浮かばない。
絶対にウィルドだ……っ!

なぜガルへの誕生祝いが女物の下着なのか!?

手にしたベビードールをぎりぎりと握りしめれば、パサリと何かが床に落ちた。
申し訳程度に布地のついた細長い紐……とりあえず見なかったことにする。

「マヤ、嫌なら無理にとは……」

「……着ます」

覚悟を決めて答える。
だってこれは、数少ない『私にできること』だ。
私だって、ガルの誕生日を祝いたい気持ちは本当なのだから。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...