ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

７１～８０話

７３b、私は紳士的な指先をわかっていない

やわらかな草葉を踏みしめながら当てもなく歩き、その存在感に誘われるようにふらりと大木に近寄る。
木の根元に腰を下ろしたガルに胡座座の上をぽんぽんと叩いて示され、いそいそとガルの上に座った。

「ガル様はこの公園、よく来るんですか？」

「いや……ごく稀に散歩に訪れるぐらいだな。ここは平和でいい」

広い公園を見渡せば、ペットを散歩させる人や幼い子供を連れた家族、ベンチで日向ぼっこする老人など、思い思いに寛いで過ごす人々が見える。

「ガル様達、騎士の人達が守ってくれてるおかげですね」

「……そうだろうか」

ガルが意外そうに言った。

「？　そうでしょう？」

きょとんとガルを見つめて聞き返す。

騎士は、敵や悪者をやっつけて国の平和を守ってくれる正義の味方のような存在だと思っていたけれど、違ったのだろうか？

「マヤに言われると、そんな気がしてくるな」

ガルは目元を緩めて優しく髪を撫でてくれた。

暖かな木漏れ日が降り注ぎ、サワサワと葉を揺らしながらやわらかな風がそよぐ。

「んーっ、気持ちいいお天気ですね。お弁当でも持ってくればよかった」

たっぷりと空気を吸い込んで伸びをする。

米がないからおにぎりは無理だけど、材料さえあればサンドイッチくらいなら作れただろう。
ここで食べたらとっても気持ちがよさそうだ。

「それなら昼は、そこらの屋台で買ってきてここで食べるか？」

それはとても魅力的な誘いだった。