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61~70話
68d、クリスマス番外編 12月25日
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「これは……俺、か?」
人型のクッキーをそっと一枚摘み上げ、ガルが首を傾げる。
「はい、一応……。甘さ控えめの、ジンジャークッキーにしてみました」
クリスマスらしくジンジャーマンを作りたかったのだけれど、人型の型抜きはなかったのでせっせと手で成形し、せっかくなので目の部分には赤いドライフルーツを乗せて不恰好ながらもガルのイメージで作ったのだ。
「今日は、その……故郷の、『クリスマス』っていうお祝いの日なんです」
そして私は、クリスマスについて知っている限りをガルに説明した。
と言っても、神様の誕生日らしいこと、家族や恋人と過ごすこと、ツリーを飾ること、サンタという人物がプレゼントを配ること、ケーキやチキンを食べ、プレゼントを贈りあってお祝いすること、くらいだけれど。
「それで俺にプレゼントをくれたのか」
「はい。ガル様の家の、食材ですけど……」
クッキーの材料は私が用意したわけではないので、これをプレゼントと言えるかさえ怪しいところだ。
「この屋敷のものはすべてマヤのものでもあるんだ、何でも好きに使ってかまわない。このクッキーも、本当に……すごく嬉しい。……食べてしまうのが惜しいな……」
ガルは真剣な面持ちで不恰好なクッキーを眺めながら、何やらブツブツと呟いている。
「氷漬けにすればあるいは……」
一向に食べてくれる様子がないのは、クッキーが不恰好だから味も悪そうだと心配しているのだろうか。
「料理長に手伝ってもらったので、味は大丈夫だと思うんですけど……」
もじもじとスカートの裾を弄りながら、窺うようにチラとガルを見る。
「……いただこう」
ガルが意を決したようにクッキーに噛りついた。
サクッ……サクサク……
軽い音をさせながら、クッキーがガルの口に消える。
「うん。ジンジャークッキーは初めて食べるが、スパイシーな風味で美味いな」
「よかったぁ!」
憂いも晴れて、満面の笑みをガルに向ける。
ガルも嬉しそうに目を細め、私を見つめ返した。
人型のクッキーをそっと一枚摘み上げ、ガルが首を傾げる。
「はい、一応……。甘さ控えめの、ジンジャークッキーにしてみました」
クリスマスらしくジンジャーマンを作りたかったのだけれど、人型の型抜きはなかったのでせっせと手で成形し、せっかくなので目の部分には赤いドライフルーツを乗せて不恰好ながらもガルのイメージで作ったのだ。
「今日は、その……故郷の、『クリスマス』っていうお祝いの日なんです」
そして私は、クリスマスについて知っている限りをガルに説明した。
と言っても、神様の誕生日らしいこと、家族や恋人と過ごすこと、ツリーを飾ること、サンタという人物がプレゼントを配ること、ケーキやチキンを食べ、プレゼントを贈りあってお祝いすること、くらいだけれど。
「それで俺にプレゼントをくれたのか」
「はい。ガル様の家の、食材ですけど……」
クッキーの材料は私が用意したわけではないので、これをプレゼントと言えるかさえ怪しいところだ。
「この屋敷のものはすべてマヤのものでもあるんだ、何でも好きに使ってかまわない。このクッキーも、本当に……すごく嬉しい。……食べてしまうのが惜しいな……」
ガルは真剣な面持ちで不恰好なクッキーを眺めながら、何やらブツブツと呟いている。
「氷漬けにすればあるいは……」
一向に食べてくれる様子がないのは、クッキーが不恰好だから味も悪そうだと心配しているのだろうか。
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もじもじとスカートの裾を弄りながら、窺うようにチラとガルを見る。
「……いただこう」
ガルが意を決したようにクッキーに噛りついた。
サクッ……サクサク……
軽い音をさせながら、クッキーがガルの口に消える。
「うん。ジンジャークッキーは初めて食べるが、スパイシーな風味で美味いな」
「よかったぁ!」
憂いも晴れて、満面の笑みをガルに向ける。
ガルも嬉しそうに目を細め、私を見つめ返した。
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