282 / 486
61~70話
65c、ご主人様は人目をわかっていない2
しおりを挟む
あてもなくぶらぶらと店先を覗いて回れば、時折顔を上げて店を眺めている気配は感じるものの、声をかければまたぐりりと顔を埋めてしまう。
これは本格的にへそを曲げさせてしまったようだ。
俺の行動に腹を立てながらもぎゅうと俺にしがみつくマヤが愛しくて愛しくて堪らないのだが、今それを指摘すれば益々機嫌を損ねるだけだろう。
屋敷で夕食を終え部屋に戻ってもまだ、マヤの下唇はむぅと突き出されていた。
「マヤ、俺が悪かった。どうか機嫌を直してはくれないか?」
ソファに座り憮然と腕の中に収まるマヤの唇をちょんと突つけば、マヤが口を開いた。
「…………ガル様は! 人目を気にしなさすぎなんですっ!」
「ああ、すまない。マヤを婚約者として連れ歩けることが嬉しくて、浮かれていたんだ」
「なっ! そっ、…………うぅ……」
二の句が継げず黙り込んでしまったマヤの熱い頬に手を添え、そっと上向かせる。
表情を窺いながらゆっくりと顔を近付けても嫌がる素振りはなかったので、そのまま愛らしい唇に口付けを落とした。
「んっ……ぅ……、っはぁ」
「っは……マヤ、覚えていてくれ。俺はいつでもマヤに触れていたくて堪らないんだ」
「……時と場所は、気にしてくださいね」
いつもにように風呂に入り、共寝する。
それですべて、赦されたと思っていたんだ。
次の日の晩、あんなことを言われるまでは。
「ガル様、今日のお風呂は一人で入りたいです」
————————————
■あとがき■
これにてガル様視点による振り返り終了です。
これは本格的にへそを曲げさせてしまったようだ。
俺の行動に腹を立てながらもぎゅうと俺にしがみつくマヤが愛しくて愛しくて堪らないのだが、今それを指摘すれば益々機嫌を損ねるだけだろう。
屋敷で夕食を終え部屋に戻ってもまだ、マヤの下唇はむぅと突き出されていた。
「マヤ、俺が悪かった。どうか機嫌を直してはくれないか?」
ソファに座り憮然と腕の中に収まるマヤの唇をちょんと突つけば、マヤが口を開いた。
「…………ガル様は! 人目を気にしなさすぎなんですっ!」
「ああ、すまない。マヤを婚約者として連れ歩けることが嬉しくて、浮かれていたんだ」
「なっ! そっ、…………うぅ……」
二の句が継げず黙り込んでしまったマヤの熱い頬に手を添え、そっと上向かせる。
表情を窺いながらゆっくりと顔を近付けても嫌がる素振りはなかったので、そのまま愛らしい唇に口付けを落とした。
「んっ……ぅ……、っはぁ」
「っは……マヤ、覚えていてくれ。俺はいつでもマヤに触れていたくて堪らないんだ」
「……時と場所は、気にしてくださいね」
いつもにように風呂に入り、共寝する。
それですべて、赦されたと思っていたんだ。
次の日の晩、あんなことを言われるまでは。
「ガル様、今日のお風呂は一人で入りたいです」
————————————
■あとがき■
これにてガル様視点による振り返り終了です。
11
お気に入りに追加
3,295
あなたにおすすめの小説


義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる