ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

５１～６０話

５５b、ご主人様は自制の限界をわかっていなかった ※

「……マヤ？」

即座に体勢を戻したマヤは、俺の胸に顔を突っ伏している。

「マヤ、顔を見せて？」

一体どんな顔をして口付けを贈ってくれたのだろうか。

マヤは黙ってきゅっとしがみつき、俺の胸に埋うずまるようにぐりぐりと顔を押し付けてくる。

「ほら、そんな抵抗をしても可愛いだけだぞ」

マヤの両脇に手を差し入れ、顔がよく見えるよう俺の眼前へと引っ張り上げた。

「うぅ……」

湯気が立ちそうなほど真っ赤な顔をしたマヤが、羞恥に瞳を潤ませ上目遣いにこちらを見やる。

「……勝手に……して、ごめんなさい……」

「っ……マヤは俺を試しているのか」

それ以上その顔を見ていたらとんでもない事を仕出かしてしまいそうで。

「え？」

肩口に押し付けるようにマヤの頭を抱いて、顔が見えないようぎゅっと抱きしめた。

「っはぁー……」

気を落ち着けるため長く息を吐き出す。

婚約を取りつけたといっても、これは騙したようなものだ。
マヤの気持ちも伴わず……そもそもこんなに幼いマヤ相手に、手を出せようはずもない。

幸せなはずの婚約生活は、なんとも前途多難なようだった。