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51~60話

55e、ご主人様は自制の限界をわかっていなかった ※

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マヤを先に上げたのはいいが、俺も早く風呂から上がらなくては。
マヤ一人ではうまく着替えられず泣いているかもしれない。

何度振り払おうとしても頭の中を埋め尽くす先ほどの光景に、このまま冷水を浴び続けるより一度欲望を吐き出してしまった方が早いと判断した俺は、とうとう観念して風呂椅子に腰を下ろした。

先ほどのマヤの姿を思い浮かべながら、自身に手を添えゆるく扱く。

「……っ」

一瞬のことだったというのに、その光景は鮮明に脳裏に描き出される。

薄紅色に上気した頬、濡れた髪から滴る雫、嬉しそうにこちらを見る眼差しに、弧を描いて開かれた唇。
その唇に触れればふっくらとやわらかく、ひたりと吸い付くことを知っている。

剥き出しになった細い首筋を水滴が伝い、振り返る動きで波打った水面へと吸い込まれていく。
ゆらゆらと光を反射させる水面から透ける白く慎ましやかな双丘と、先端に色付く薄桃。

「っは……」

早まる手の動きが、ぐちぐちと濡れた音を立てる。
胸元を洗ってやるたび、視線を逸らしていても手の平をくすぐる小さな突起の感触に、どれほど理性を掻き乱されていることか。

極めつけは、すくい取った左手に輝いた小さな指輪だ。
俺の瞳の色をした小さな石が静かにその存在を主張して、マヤが誰のものであるかを明示する。

腕の中にすっぽりと抱きしめたマヤが、丸ごと俺のものになったのだ。

「マヤ……っ、マヤ……」

愛している。愛している。

嬉しそうに微笑む唇に口付けて、濡れたやわらかな肌を舐めあげて。
触れぬ場所などないほど満遍なく愛し尽くせたなら―――

「くっ……」

手の中の熱が大きく脈打ち、ドクリと白濁を吐き出した。
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