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51~60話

54b、ご主人様は私の想いをわかっていなかった

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マヤをソファに据え、隣に腰かけて向き直る。

正面からしっかりと向き合うために。
もしもの時……逃げるマヤの妨げになってしまわないように。

マヤは俯いて黙り込み、その表情は見えない。
心なしか顔色が悪い気もする。

「マヤ? どうした?」

「……いえ」

空腹に耐えかねているのだろうか。
それならば尚更早く話を済ませてしまわなくては。

マヤの両肩を掴み、顔を上げたマヤの瞳を真正面から覗き込む。

「昨日の、俺といたいと言ってくれた気持ちは本心か?」

「……はい……」

マヤはか細い声で、それでも視線を逸らすことなく答えた。

「考えたんだが……マヤを、解放してやることはできない。が、マヤが俺といると約束してくれるのなら、その邪魔な首輪を取ってやることはできる」

「え……」

「いや、違うな。マヤからすれば首輪が別の物に置き換わるだけだ。それでも、その首輪よりはマシだろう」

首輪が邪魔だろうなどと、ていのいい言い訳だ。
本当は俺自身が、無理矢理にマヤを縛り付けているのだと思い知らされたくないだけだというのに。

俺が与えようとしているものを考えれば、マヤにとって本当に首輪よりマシなのかさえも怪しいところだった。

「これなんだが……」

懐から革袋を取り出すと、マヤに見えるよう手の平の上に中身をあける。

コロリと転がり出たのは、赤い石の付いた繊細な作りの小さな指輪。

「これが『首輪の代わり』ですか?」

「ああ。どうだろう? その首輪よりは邪魔にならないと思うんだが」

「なんだか、ガル様みたいな色ですね」

ギクリ、と心臓が嫌な音を立てる。
浅ましい俺の思惑など、すべて見透されているのではないかと。

「……着けてくれるか?」

嫌な緊張に声が強張る。
そんな俺の緊張をよそに、マヤは素直にこくんと頷いた。

「……はい。首輪より、こっちの方がいいです」

「そうか」

マヤの返事に、詰めていた息をホッと吐き出した。
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