ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

４１～５０話

４８e、ご主人様は愛をわかっていなかった

「あの……よかったらガル様も、食べてみませんか……？」

マヤがそっと窺うように、上目遣いにこちらを見つめる。

「そうだな」

甘い誘惑に吸い寄せられるように、マヤの唇に触れた。

唇の表面を舐めとる。
ああ、甘い。
マヤがもたらす甘みは、なんと美味いのだろう。

さらなる甘露を求めて、薄っすらと開いた唇の隙間から舌を差し入れる。
柑橘を凝縮したような爽やかな甘みに混じる、菓子のそれとは別のうっとりするような甘さ。
これがマヤの味か……。

味わい尽くすように陶然と、甘くやわらかな舌を絡めとる。
心地いい。もっと。もっと味わわせてくれ。

「んぅっ……」

「！！」

聞き慣れぬ様相のマヤの声に、はっと我にかえる。
ガバッ、と勢いよく顔を離せば、俺とマヤの唇を繋いだ銀糸がぷつりと切れた。

「……」

マヤは目を丸くしてこちらを見つめている。

「……」

俺は……俺は一体何をした！？

腕の中で安心しきって、無邪気に菓子を喜ぶマヤに。
己の欲望からも守ると、そう心に決めたはずなのに。

みるみる顔から血の気が引く。

「っすまない！」

触れたいという衝動が抑えきれず、半ば無意識にマヤに手を出してしまった。
自分のしでかした事だというのに、口付けに傷付いたマヤが悲しみに表情を曇らせていくのを目にするのは耐えられなかった。

情けなくも俺は、マヤを残し一人風呂場へと逃げた。