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41~50話

46c、ご主人様は自分の感情をわかっていなかった

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………………

懸念していた小切手は難なく受理され、つつがなく契約を終えた。
表立った国交はなくとも、商人には独自の伝手があるのだろう。

廊下で崩れ落ちた身体を担ぎ上げれば驚くほど軽く、細く華奢でいてふにふにとやわらかい。

屋敷に着いて意識を取り戻しフードを取った俺の姿を前にしても、やはり不思議そうに見上げるだけで俺に怯える様子はなかった。

逃げ出されないよう部屋に入ってから手足の枷を取ってやると、ぐいと膝の上に抱き上げる。

腕の中に収まる小さくやわらかな身体。
そのつぶらかな瞳いっぱいに、俺を映していてほしい。
愛玩・・奴隷なのだから、思う存分に愛でていいはずだ。


名前はマヤと言うらしい。

事前に予習しておいた愛玩動物の飼育本には、愛玩動物の世話は主人が責任を持って行うようにと書いてあった。
そうでなくともマヤの世話を人に任せるつもりはない。
飼育本の内容を思い浮かべながら、食事に洗身にとあれこれマヤの世話を焼いた。




マヤが可愛くてたまらない。

マヤの無垢な瞳に映されるたび、自分が普通の人であるような、強すぎる魔力もそれに伴う辛い思い出もすべて許容されたような、そんな穏やかな気持ちになる。
小さな身体をすっぽりと腕に囲えば、言いようのない安心感に満たされた。

マヤは庭の赤薔薇を俺の瞳のようだと言う。
血だの悪魔だのと言われた俺の瞳を、こんなに綺麗なものに例える存在がいるとは、思ったこともなかった。
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