141 / 486
31~40話
33d、私は口付けの先をわかっていない2 ※
しおりを挟む
買われてきた初日から毎晩一緒にお風呂に入ってきたし、ガルの手はいつも優しいだけだったから、てっきりガルは私の裸を見ても何とも思わないのだろうと思っていたのに。
「だって今までは何も……」
「律していたからな」
「律し……っくしゅっ」
「すまない! 冷えてしまったか! 急いで身体を洗ってしまおう」
そう言うとガルは泡だらけの手の平で、いつものようにスルスルと私の身体を隅々まで撫でた。
太ももの隙間に差し入れられた手が股をなぞる瞬間、ぬるっと、石鹸のものではない滑りがガルの手を滑らせた。
「んゃっ」
き、消えてしまいたい……。
ぬるんぬるん
「マヤ……」
ガルの嬉しそうな声が居たたまれない。
「は、早くお風呂に入らせてくださいっ!」
「そうだったな……」
名残惜しそうに手を引き抜き私に湯を浴びせかけると、ひょいと腿の上から下ろす。
背後に回った私がガルの広い背中を洗う間に、ガルも前面をさっさと洗って湯を浴びた。
抱き上げられ、一緒に湯船に浸かる。
浸かる……が……。
「なんで、こっち向きなんですか……っ」
湯に濡れたガルの逞しい肩に手を置いて、ぐーっと突っ張る。
ガルを跨いで向かい合うように腿の上に乗せられ、その状態でガルが膝を立てるものだから、お尻が滑り下りてあらぬ場所がガルに密着してしまいそうなのだ。
いつもは背中から抱きしめる体勢なのに!
「こちらの方が、口付けやすいだろう?」
ガルはしれっとのたまう。
つい先程結婚してほしいと言ってきた時の、あの殊勝さはどこへ行ってしまったのか!
伸びてきたガルの腕に捕われれば、私の腕の突っ張りなど物ともせずにぎゅうと抱きしめられた。
「だって今までは何も……」
「律していたからな」
「律し……っくしゅっ」
「すまない! 冷えてしまったか! 急いで身体を洗ってしまおう」
そう言うとガルは泡だらけの手の平で、いつものようにスルスルと私の身体を隅々まで撫でた。
太ももの隙間に差し入れられた手が股をなぞる瞬間、ぬるっと、石鹸のものではない滑りがガルの手を滑らせた。
「んゃっ」
き、消えてしまいたい……。
ぬるんぬるん
「マヤ……」
ガルの嬉しそうな声が居たたまれない。
「は、早くお風呂に入らせてくださいっ!」
「そうだったな……」
名残惜しそうに手を引き抜き私に湯を浴びせかけると、ひょいと腿の上から下ろす。
背後に回った私がガルの広い背中を洗う間に、ガルも前面をさっさと洗って湯を浴びた。
抱き上げられ、一緒に湯船に浸かる。
浸かる……が……。
「なんで、こっち向きなんですか……っ」
湯に濡れたガルの逞しい肩に手を置いて、ぐーっと突っ張る。
ガルを跨いで向かい合うように腿の上に乗せられ、その状態でガルが膝を立てるものだから、お尻が滑り下りてあらぬ場所がガルに密着してしまいそうなのだ。
いつもは背中から抱きしめる体勢なのに!
「こちらの方が、口付けやすいだろう?」
ガルはしれっとのたまう。
つい先程結婚してほしいと言ってきた時の、あの殊勝さはどこへ行ってしまったのか!
伸びてきたガルの腕に捕われれば、私の腕の突っ張りなど物ともせずにぎゅうと抱きしめられた。
1
お気に入りに追加
3,299
あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる