ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

３１～４０話

３１b、私はご主人様の誤解をわかっていない

「あ、ガル様、口元にパン屑が」

右半身はガルに凭もたれたまま、自由になる左手でパン屑を摘み取る。

「ああ、すまない」

ガルは私の手首を掴むとそのまま口を寄せ、摘んだ私の指ごとパン屑をパクリと食べた。

「っ！」

頬がみるみる紅潮していく。

「俺そろそろ砂糖吐きそ……って、あれっ？　お前らいつの間に婚約したんだ！？」

ギクッとガルの身体が強張る。

こんやく……、婚約……？
ガルが？　いつの間に！？　誰と！？

え、でも待って、ウィルドは今確か……

「お前、ら・……ですか？」

「だってそうだろ？　マヤちゃんのそれ」

ウィルドがフォークで指し示す先では、照明の光を反射して赤い石がキラリと輝いた。

「え……だって……」

この指輪は奴隷の首輪の代替品で、『ずっと側にいる』という契約を込めた物だったはず。
だってあの時ガルは「一生を共にしてくれ」としか……。

「……ガル様？」

ジトリと上目遣いでガルを見やれば、わざとらしく視線を逸らされる。

「んだよ、言ってくれよなー！　んで？　式はいつやるんだ？」

「６年後あたりだろうな」

ガルはそっと私の手を下ろすと、素知らぬ顔でフォークを手にとった。

「え」

式……式ってあの式？　結婚の、式？
具体的な時期まで決まってるの？？