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21~30話
29a、私は感触の正体をわかっていない
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くぅぅぅ
二人が抱き合う静かな空間に、小さな音が響いた。
ガルが不思議そうにきょろきょろと周囲を見渡す。
「今、子犬の鳴き声がしなかったか?」
私はガルの胸に顔を突っ伏したまま、くぐもった声で答えた。
「私の……お腹の音、です……」
「っ! すまない! すぐ食事にしよう」
うぅぅ……こんなことになるなら、一人で先に食べておくんだった。
すっかり冷めきった私の食事を捨て新たに作り直させようとするガルを押し留め、押し問答の末、なぜか最終的に冷めた私の食事とたった今部屋に運び込ませた熱々のガルの食事の両方を二人で半分こすることで決着がついた。
もぐもぐもぐ
あーん
それにしてもさっきから、私の口には温かい料理しか運ばれていない気がするのだけど……。
「近いうちにまた訓練の見学会があるんだが、マヤは来てくれるか?」
「んくっ、はい! 行きたいです!」
慌てて口の中のパンを飲み込んで答える。
「今回は以前の公開訓練とは違い小規模なものだ。模擬試合も行わないから、少々退屈かも知れないが……」
「大丈夫です! 訓練風景を見てるだけでも十分楽しかったので」
本音を言えば、ガルと一緒にいられるのなら場所や内容は何だってかまわないのだ。
「では、参加すると伝えておこう」
「はい!」
元気よく頷き、再び目の前に差し出された熱々の肉を頬張った。
二人が抱き合う静かな空間に、小さな音が響いた。
ガルが不思議そうにきょろきょろと周囲を見渡す。
「今、子犬の鳴き声がしなかったか?」
私はガルの胸に顔を突っ伏したまま、くぐもった声で答えた。
「私の……お腹の音、です……」
「っ! すまない! すぐ食事にしよう」
うぅぅ……こんなことになるなら、一人で先に食べておくんだった。
すっかり冷めきった私の食事を捨て新たに作り直させようとするガルを押し留め、押し問答の末、なぜか最終的に冷めた私の食事とたった今部屋に運び込ませた熱々のガルの食事の両方を二人で半分こすることで決着がついた。
もぐもぐもぐ
あーん
それにしてもさっきから、私の口には温かい料理しか運ばれていない気がするのだけど……。
「近いうちにまた訓練の見学会があるんだが、マヤは来てくれるか?」
「んくっ、はい! 行きたいです!」
慌てて口の中のパンを飲み込んで答える。
「今回は以前の公開訓練とは違い小規模なものだ。模擬試合も行わないから、少々退屈かも知れないが……」
「大丈夫です! 訓練風景を見てるだけでも十分楽しかったので」
本音を言えば、ガルと一緒にいられるのなら場所や内容は何だってかまわないのだ。
「では、参加すると伝えておこう」
「はい!」
元気よく頷き、再び目の前に差し出された熱々の肉を頬張った。
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