ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

２１～３０話

２７a、私は新しい契約をわかっていない

「マヤ、大丈夫か？　ほら、首輪は取れたぞ」

恐る恐る目を開くと、ガルが掲げた左右の手には真っ二つに割れた首輪がそれぞれ握られていた。

目の前の光景が信じられず何度も瞬いて、それからそっと自分の首元に手をやる。

指先に触れるのは、熱の余韻で少し火照った自分の首筋だけ。

「取れた……」

異世界に来て間もない私の未来を奪った首輪が。
私の言動を熱で縛り付けた枷が。

背中の傷も癒えた。契約の首輪も外れた。

今この瞬間、私と奴隷商館を繋ぐものは何一つなくなったのだ。

「私……奴隷じゃなくなった……？」

今。この時だけは。

「ああ、そうだな……。人族は魔力の扱いに疎うとい。魔具もちょっと過剰に魔力供給してやれば受け止めきれず簡単に毀損きそんする」

ガルは首輪だった二片の金属をぞんざいに放ると、テーブルに乗せていた指輪を手に取った。

「せっかく自由になったところ悪いが、今度はこれをつけてもらう」

「はい」

最初からわかっていたことだ。否やはない。

「……今なら、俺の言葉に反対することも、ここから逃げ出すことだってできるだろう」

「？」

ポツリと洩らされた言葉に、ガルが何を言わんとしているのかわからずじっと瞳を見つめ返す。

「これは……一生を共にするという契約だ。この先身分の買い取りや俺の意思による解放は望めない。本当に、永遠に俺の元にいることになる」

「永遠に……？」

首輪の時とは、契約の内容が変わるのだろうか？