ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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21~30話

24a、私は口付けの意味をわかっていない

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今まで深く考えないようにしてきた自分の気持ちに、とうとう気付いてしまった。

過度なスキンシップがちっとも不快じゃないのも、腕の中に囲われるとひどく安心するのも、仕事へ見送るのが少し寂しいのも、唇にされたキスが全く嫌じゃなかったのも。
……キスを謝られて、胸が痛んだのも。

何もかも全て、ガルに好意を抱いていたからだ。




嗚咽を洩らしながらガルの首元に顔を埋め、もう離れたりしないようぎゅうぎゅうとしがみつく。
ガルを通して伝わる規則的な馬車の揺れと背中を撫でさする温かな手の平に、ゆっくりと気持ちが落ち着いていくのがわかった。

馬車を降りてまた足早に歩いていたガルがふいに静かな空間の中で腰を下ろしたのに気付いて、首元に埋めていた顔をそろりと上げる。
目の縁に溜まっていた涙が、またぽろりと転げ落ちた。

「あ……」

見渡せば、潤んだ視界にすっかり見慣れた室内が映った。

ちゃんと、この部屋に帰ってこられたんだ……。

「マヤ、落ち着いてきたか?」

すっかりぐしゃぐしゃになった顔全体をやわらかなハンカチでぬぐわれる。
すんと鼻を鳴らす私の目尻を、ガルの親指が優しくなぞった。

「こうしてまた見つけられて、本当によかった……。何も危険な目には遭ってないか?」

コクリと首肯し、未だ涙の残る瞳でじっとガルを見つめる。

ああ、好きだ。自覚してしまえばもう、どうしようもなくガルが好きだ。
なんで今まで平気でいられたんだろう。
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