ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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21~30話

23b、私は今立っている場所をわかっていない

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知っているものの何一つないこの場所が、全身で私を異物だと拒絶しているように感じる。

心の置き所なんてどこにもなくて、絶望にしゃがみ込むことも、希望に歩を進めることもできなくて、ただ果てしない疎外感と孤独感が立ち尽くす身をむしばむ。


帰りたい。

奴隷商人に捕まった時の恐怖とも違う。

怖い。怖い。怖い。

だって私は知ってしまった。
自分の居場所がある喜びを。
おかえりなさいと出迎える嬉しさを。
ぎゅっと抱きしめられる安心を。
想いを与えられる幸せを。

だって、私はもう、知ってしまったのだ……。


帰りたい。帰りたい。

思い浮かぶ景色はただ一つ。

落ち着いた調度品に囲まれた部屋で、ゆったりとソファに座り私を抱きしめる、優しい腕の中。

焼けつくほどの心細さに涙が込み上げそうになるのを、ギリと歯を食いしばって押し込める。

絶対に泣くものか。
どんなに泣き叫んだって救いの手なんかどこからも差し伸べられなくて、その現実にさらに打ちのめされるだけだと知っている。
寂しい時に泣けるのは、その涙をぬぐってくれる相手のいる人だけだ。

きつく瞼を閉ざす。
でも、どうしよう。どうすればいい?

じわじわと熱を増す首輪に気持ちが焦り、冷静な思考なんてできない。

帰りたい。帰りたい。帰りたい。

「お嬢ちゃん、どうした? 迷子かい?」

ふいにかけられた声にビクッと身体を跳ねさせる。

恐る恐る顔を上げれば、杖をついたお爺さんが心配そうに顔を覗き込んでいた。
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