ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁

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21~30話

23d、私は今立っている場所をわかっていない

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「ガっ……さま……! もっ、会えないかと、思っ……」

みっともなくしゃくり上げながら、ガルのシャツに涙が染み込むのも構わずぐりぐりと顔を埋める。

「マヤ……怖い思いをさせてすまなかった」

何の非もないガルが沈痛な声で謝るのも、夢中でしがみつく私には聞こえていない。

ガルだ。ガルがいる。本物のガルだ。

「ご老体、うちのマヤが世話になった。礼を言う」

「なぁにかまわんよ。お嬢ちゃん、迎えが来てよかったなぁ」

お爺さんはシワだらけの顔をくしゃりと潰して、優しく笑った。




「ガルさまっ……ガルさま……」

いつものように抱き上げられガルが歩き出しても尚、ぎゅっと太い首にしがみついて涙でぐしゃぐしゃの顔を擦り付ける。

親にいないものとして扱われる日々の尽きない孤独。
電車に轢かれそうになった瞬間の本能的な恐怖。
突然知らない世界へと放り出された当惑。
騙され拐われたことへのる方ない思い。
鞭打たれる鋭い痛み。未来への絶望。

どんなに辛くても、涙は流さなかった。
泣いても無駄だと、泣けばさらに辛くなるだけだとわかっていたから。

けれど今、この瞬間。
力強い腕に抱きしめられ大きな手の平に背を撫でられて、全身を包み込むような言いようのない安心に、これまで飲み込み続けてきた何年分もの涙が、とめどなくあふれて頬を濡らした。

帰ってこられた。
私の居場所に。優しい腕の中に。
また会えた。
探してくれた。見つけ出してくれた。
嬉しい。嬉しい。
もう離れたくない。ずっと、ずっと一緒に……



―――ああ、そうか。そうだったのか。


私はいつの間にか、ガルのことを好きになっていたんだ。
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