ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ～皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます！～

１１～２０話

１３b、私は準備の大変さをわかっていない

　……ええい！　女は度胸！

　屈んだ状態でもガルのおでこには口が届かないので、ギュッと目を瞑ってガルの頬に唇を押しあてた。

　ちゅっ

　即座にきつく抱きすくめられる。

「マヤ！　なんて可愛いんだ」

「うっ、ガル様、苦し……」

　ギブギブ！　中身出ちゃう！

「！　すまん」

　緩められた腕の中からガルを見上げる。
　心臓がドクドク言っているが、キスしたことによるドキドキなのか抱擁の苦しさによるバクバクなのか判別はつかない。

「ガル様？　なんだか今日はご機嫌ですね」

「ああ。ようやく明日非番なんだ」

　考えてみればガルの屋敷に来てから十日間、フェンベックに引きずられて行ったあの日を含めガルは連日働きづめだった。
　久々の休みではご機嫌にもなるだろう。
　どこかに出かけたりするのだろうか。


　抱きしめた私ごとソファへ移動すると、横抱きに抱きしめ直される。

「マヤ、明日は一緒に出かけよう」

「私もお出かけについて行っていいんですか？」

　私も抱きしめられることに慣れてきて、右半身をガルに凭れて楽な姿勢をとった。

「勿論。行き先はウィルドの家だがな」

　ウィルドって、確かフェンベックのことだよね？
　仲のいい同僚の家に行くのに、私をつれて行ってくれるの？

　でも、奴隷なんか連れていては不快に思われるかもしれない。
　ガルの元にいるとうっかり忘れそうになるけれど、今の私は外せない首輪の契約に縛られた奴隷でしかないのだ。