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1~10話
10b、私は応援のタイミングをわかっていない
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第一試合は前後どちらの面も新人とおぼしき若い騎士達だ。
ガルと、茶髪男ことフェンベックがそれぞれ審判に就いている。
審判の始め! の合図とともに、目の前で試合が始まった。
「おぉー」
部活紹介で剣道部の手合わせは見たことがあったけれど、気迫が全然違う。
空気を介して緊張感がピリピリとこちらにまで伝わってくるかのようだ。
これが本物……!
思わず前のめりになり、グッと拳を握りしめる。
使っているのは刃を潰してあるとはいえ重そうな金属製の剣だ。身体に当たれば切れずとも怪我を負うだろう。
拮抗していた勝負は、片方が隙を突かれ剣を取り落としたことで決着した。
どうやら敗北を宣言するだけでなく、剣を放してもその時点で負けになるようだ。
その後も次々と試合が行われる。
実力が近い者同士で組まれているのだろう試合はどれも接戦で、回を重ねる毎にどんどんと引き込まれていった。
「いけーっ! あぁっ、危ない!」
見物客達の熱狂に包まれ、肉薄する接戦に手に汗握る。
周囲の姦しい声援に混じって、自分の声も次第に大きくなっていった。騎士達の試合が一通り終わると審判が交代し、ガルとフェンベックがおもむろにコートに入った。
「キャー! ついにフェンベック様の番よ!」
「フェンベック様ー! お勝ちになってー!」
「フェンベック様のご勇姿を拝見させてー!」
「フェンベック様こちらを向いてー!」
周囲から一斉に発せられた黄色い声援で、鼓膜が突き破られそうだ。
なんだ、フェンベックばっかり応援しちゃって。
誰もガルを応援しないなんて!
大量の声援に掻き消されないよう、私も声を最大限に張り上げて叫んだ。
「ガル様頑張ってー!!」
…………
シーン……
開始の合図を遮らないためか訪れた束の間の静寂に、私の声が天高く響き渡った。
ガルと、茶髪男ことフェンベックがそれぞれ審判に就いている。
審判の始め! の合図とともに、目の前で試合が始まった。
「おぉー」
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空気を介して緊張感がピリピリとこちらにまで伝わってくるかのようだ。
これが本物……!
思わず前のめりになり、グッと拳を握りしめる。
使っているのは刃を潰してあるとはいえ重そうな金属製の剣だ。身体に当たれば切れずとも怪我を負うだろう。
拮抗していた勝負は、片方が隙を突かれ剣を取り落としたことで決着した。
どうやら敗北を宣言するだけでなく、剣を放してもその時点で負けになるようだ。
その後も次々と試合が行われる。
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「いけーっ! あぁっ、危ない!」
見物客達の熱狂に包まれ、肉薄する接戦に手に汗握る。
周囲の姦しい声援に混じって、自分の声も次第に大きくなっていった。騎士達の試合が一通り終わると審判が交代し、ガルとフェンベックがおもむろにコートに入った。
「キャー! ついにフェンベック様の番よ!」
「フェンベック様ー! お勝ちになってー!」
「フェンベック様のご勇姿を拝見させてー!」
「フェンベック様こちらを向いてー!」
周囲から一斉に発せられた黄色い声援で、鼓膜が突き破られそうだ。
なんだ、フェンベックばっかり応援しちゃって。
誰もガルを応援しないなんて!
大量の声援に掻き消されないよう、私も声を最大限に張り上げて叫んだ。
「ガル様頑張ってー!!」
…………
シーン……
開始の合図を遮らないためか訪れた束の間の静寂に、私の声が天高く響き渡った。
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