38 / 486
1~10話
10a、私は応援のタイミングをわかっていない
しおりを挟む
時間が経つと次第に人が増えベンチが埋まりはじめる。
見渡すかぎり、そのほとんどは十代から二十代の若い女性だ。
開始時刻になり整列した騎士達は、号令がかかると統率のとれた動きで訓練を開始した。
百人近い騎士達を束ねる号令の声は、聞き慣れたガルのよく通る低音だ。
隊長とも呼ばれていたし、ガルは実は随分偉い人なのではないだろうか。
騎士達が何か行うたび、ベンチでは着飾った女性達がきゃあきゃあと黄色い声を上げる。
同年代の女の子達が楽しそうに盛り上がっている空気は元の世界での学校生活を彷彿とさせ、自分もどことなく楽しい気持ちになってきた。
中でも一際声援を集めているのは、以前ガルの屋敷の庭で見かけた事のある明るい茶髪の騎士だった。
「キャー! フェンベック様ぁー!」
「訓練されるお姿も素敵ですわー!」
本人も声が上がるたびに微笑み返したり手を振ったりとファンサービスに余念がない。なるほど、チャラい。
一方のガルはと言えば、いつも通りの難しい表情で素振りする騎士達の動きを確認している。
何とも対照的な二人だ。
基礎トレーニングや素振りなどを一通りこなした後は、一対一での模擬試合が組まれていた。手前と奥の二面を使って、二組ずつ試合が行われる。
客席の熱狂ぶりがすごいので、これが公開訓練の目玉なのだろう。
使用するのは刃を潰した剣で、今日の模擬試合では魔法は使用しないとの説明が見物客向けになされた。
よかった。それなら血は流れなさそうだ。
戦いなんて無縁の平和な国で育ったのだ。目の前で流血沙汰を見せられる訳ではないことにほっと胸を撫で下ろす。
魔法を見られないことはほんの少し残念に思うけれど、ついさっき異世界を実感して足元が揺らいだばかりだ。急にCG映画のような光景が眼前で繰り広げられたなら、自分がどうなってしまうかわからないという恐怖もあった。
見渡すかぎり、そのほとんどは十代から二十代の若い女性だ。
開始時刻になり整列した騎士達は、号令がかかると統率のとれた動きで訓練を開始した。
百人近い騎士達を束ねる号令の声は、聞き慣れたガルのよく通る低音だ。
隊長とも呼ばれていたし、ガルは実は随分偉い人なのではないだろうか。
騎士達が何か行うたび、ベンチでは着飾った女性達がきゃあきゃあと黄色い声を上げる。
同年代の女の子達が楽しそうに盛り上がっている空気は元の世界での学校生活を彷彿とさせ、自分もどことなく楽しい気持ちになってきた。
中でも一際声援を集めているのは、以前ガルの屋敷の庭で見かけた事のある明るい茶髪の騎士だった。
「キャー! フェンベック様ぁー!」
「訓練されるお姿も素敵ですわー!」
本人も声が上がるたびに微笑み返したり手を振ったりとファンサービスに余念がない。なるほど、チャラい。
一方のガルはと言えば、いつも通りの難しい表情で素振りする騎士達の動きを確認している。
何とも対照的な二人だ。
基礎トレーニングや素振りなどを一通りこなした後は、一対一での模擬試合が組まれていた。手前と奥の二面を使って、二組ずつ試合が行われる。
客席の熱狂ぶりがすごいので、これが公開訓練の目玉なのだろう。
使用するのは刃を潰した剣で、今日の模擬試合では魔法は使用しないとの説明が見物客向けになされた。
よかった。それなら血は流れなさそうだ。
戦いなんて無縁の平和な国で育ったのだ。目の前で流血沙汰を見せられる訳ではないことにほっと胸を撫で下ろす。
魔法を見られないことはほんの少し残念に思うけれど、ついさっき異世界を実感して足元が揺らいだばかりだ。急にCG映画のような光景が眼前で繰り広げられたなら、自分がどうなってしまうかわからないという恐怖もあった。
3
お気に入りに追加
3,298
あなたにおすすめの小説
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる